ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:ミカエル・ニクヴィスト/ノオミ・ラパス/スヴェン=ベルティル・タウベ/イングヴァル・ヒルドヴァル/レナ・エンドレ/ペーター・ハーバー/ペーター・アンデション/マーリカ・ラーゲルクランツ/ビヨルン・グラナート/エヴァ・フレーリング/ミカリス・コウトソグイアナキス/アニカ・ハリン/ソフィア・レダープ/トマス・ケーラー/デイヴィッド・デンシク/ステファン・サウク/ゲスタ・ブレデフェルト/グンネル・リンドブロム/ニナ・ノーラン/ウィリー・アンドレアション/テイラ・ブラッド/ユリア・スポーレ/リン・ビョルンド
30点満点中18点=監4/話4/出2/芸4/技4
【一族の闇に迫る記者と女調査員】
相手の罠により、名誉毀損で有罪となった「ミレニアム」誌の発行責任者ミカエル。調査員リスベットからの報告で彼の人物を知った富豪ヘンリック・ヴァンゲルは、40年前に起こった姪ハリエットの失踪事件を調査するようミカエルに依頼する。いっぽう暗い過去を持つリスベットはミカエルのパソコンに侵入、そこで事件の鍵に気づき、ミカエルに協力することとなる。推理と捜査は、ヴァンゲル一族の闇へと踏み込んでいく。
(2009年 スウェーデン/デンマーク/ドイツ/ノルウェー)
【不満は大きいけれど、デキはマズマズ以上】
欧州でも日本でもベストセラーだという原作は未読。ストーリーテリングに加え、リスベットのユニークなヒロイン像も話題・人気になったらしい。
そのリスベット、確かに面白い(というのは語弊があるけれど)。虐げられ、心に闇を抱え、反発し拒絶し、ときにしたたかに、ときに自暴自棄に、目の前の問題へとぶつかっていく。決してスマートではなく、守りたいとか近づきたいなどと思える対象でもないけれど、パンク・ファッションの下に秘めた知性と行動力と退廃感は、なるほどユニークだ。
が、どうも響いてこない。これが初の大役だというノオミ・ラパスは、体当たりの演技+さまざまな心境がミックスされた表情を上手に出していて、決して悪くないとは思う(ヨーロッパ映画賞の主演女優賞にノミネート。ちなみに受賞したのは『愛を読む人』のケイト・ウィンスレット)。
ただ、顔もスタイルも立ち居振る舞いも好きなように美化・理想化することができ、行間にさまざまな想像を膨らますことも可能な小説からのヴィジュアル化という点において、ちょっと“不足”と思える。
この手の映画のヒロインを演じた(または演じそうな)ジョディ・フォスターやアンジー、キーラ・ナイトレイ、ハル・ベリーあたりと比べると、存在・女優としての“強烈さ”に欠けるのだ(まぁ「顔が好みじゃない」という個人的嗜好も大きいけれど)。
と、そういう不満は「どんなヒロインなんだろう?」という期待を抱いていたぶん強く残るけれど、映画そのもののデキは及第点以上。
ミカエルの調査とリスベットの問題を平行して描き、やがて合流させ、真相に少しずつ近づいていく、その過程の流れのよさが上質。とりわけ、1枚の写真から連続写真、新婚旅行のカップルと続くあたりは、セリフや説明を極力省いて楽しませる上手さがあり、『セブン』や『インファナル・アフェアIII』などに通じるゾクゾク感を味わえる。
撮りかたも、やや解像度が粗く、空気感があり、人物を半分陰に置く立体的な絵で、サスペンスフルな雰囲気や「その者の暗部」などを表現していてなかなか。寄り・引きのカットを細かくリズミカルにつないであって、各シーンも、シーンからシーンへの移行もテンポがいい。
ハリエットから送られてくる押し花の台紙の色(焼け具合)が時代によって微妙に違っているなど美術面での細やかさもあり、サントラによる盛り上げなど、全体として丁寧に作られている印象だ。
事件にまつわる謎自体は別に驚くほどのものでもないし、真犯人発覚後がやや長かったり、トータルでのスリルや「どうなるの?」感も足りないとは思うけれど、2時間半を興味深く見せるパワーはあるといえるだろう。
で、なんでもデヴィッド・フィンチャーがハリウッドでリメイクし、そっちはダニエル・クレイグと『ソーシャル・ネットワーク』のルーニー・マーラというコンビ。う~ん、ビミョー。
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