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2011/08/30

評決

監督:シドニー・ルメット
出演:ポール・ニューマン/シャーロット・ランプリング/ジャック・ウォーデン/ジェームズ・メイソン/ミロ・オシェア/リンゼイ・クローズ/エドワード・ビンズ/ジュリー・ボヴァッソ/ロクサーヌ・ハート/ジェームズ・ハンディ/ウェズリー・アディ/ジョー・セネカ/ルイス・J・スタッドレン

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【飲んだくれ弁護士、正義を問う】
 かつて前途を嘱望されながら、尊敬する師に裏切られて以来、酒に溺れ、半端な仕事しかしなくなった弁護士フランク・ギャルビン。旧友のミッキーは彼を立ち直らせようと医療過誤の案件を紹介したが、それも放り投げたままだ。が、植物人間となった被害者の姿を前に、フランクの中の正義がふたたび目覚める。相手は大病院と、手段を選ばぬ弁護士コンキャノン。それでも勝算はあるはずだったが、証人の医師が姿を消してしまい……。
(1982年 アメリカ)

【正義を信じたいなら】
 クラスメイトと4人で観に行ってから、もう30年近くたつのか。
 ルメットはいまも現役、『その土曜日、7時58分』で復活。撮影監督のアンジェイ・バートコウィアクは『ディアボロス/悪魔の扉』などでキャリアを積み上げて、監督としても『DOOM ドゥーム』などを送り出している。シャーロット・ランプリングなんか、『バビロンA.D.』とか『彼が二度愛したS』とか、いまだバリバリの“謎の美女”だ。
 いっぽうポール・ニューマンは没。ジャック・ウォーデンもジェームズ・メイソンも世を去った。自分自身も、あれから随分くたびれたものだ。

 で、当時感じたのは「フランクが正義に目覚める動機部分の描写がちょっと弱いな」という点。その印象だけは今回も変わらない。

 お話のパッケージングとしては、一応まとまっていると思う。
 裏切られた過去、それゆえ「やはり正義なんてないんじゃないか」と弱気になるフランクのキャラクター、人を小バカにした21万ドルの小切手、システマティックかつ物量投入で自信たっぷりに審理の準備を進めるコンキャノンとわざわざ証人の家まで走るフランクの対比、「行ける」という心理がフリッパーゲーム(ピンボール)の得点や対人関係にまで影響を与えてしまうこと……など、設定・道具立て・流れに過不足はなく、事件とフランクの浮き沈みをスマートに語る。

 また、トンプソン医師が頼りないことを示す証言の練習シーン、重要証人の居場所をフランクが突き止めるところから説得するまでのくだり、「タバコを切らした」ことがある人物の正体発覚につながる展開など、見せかたの上手さを感じる部分も多い。

 だからこそ余計に「フランクが正義に目覚める」瞬間を、もっと強烈かつ鮮やかに作って、観客を引っ張っていって欲しかった。寝たきりになったクライアントの写真を撮るだけではなく、この案件とフランク自身の過去を絡めたり、あるいは看護師に「俺は弁護士だ」と応えるところでグっと寄ったりといった工夫があれば、と思うのだ。

 ただ、もともと冷静で突き放した目というか、それほどフランクに肩入れしていないような雰囲気があるのは確か。
 カットは少なめで引き気味。人とカメラを動かしたり、一点透視の画面を作って長回しをしたり、全体を大きく捉えながら、フランクの様子をたっぷりと見せる。事態の成り行きと、そこで悪戦苦闘するフランクの心情を観客に把握・咀嚼させるような作りだ。
 あまりに熱が入りすぎるとウソっぽくなるところを、さすがにポール・ニューマン、抑制とキャリアを感じさせる芝居を披露する。

 また、エレベーターに乗らない(乗れない)というシーンが何度か登場する点と、1つの画面に複数の出入口がある画面構成の頻出もキーだろう。
 決められた未来に黙って辿り着くつもりはない、どちらへ進むか自分で選択できるというフランクの意志を示す、本作のテーマと密接につながった場面・演出プランであるはずだ。

 そのフランクの意志は、もちろん「正義を信じたいなら、まず自分が正義をおこなえ」という最終弁論へとつながる。
 残念ながらこの二十数年間で自分の中に正義なんて育たなかったけれど、当時ポール・ニューマンは57歳。まだ遅くはないのかな(そもそも正義を発揮すべき場面に出くわすことはないが)、なんて、いま観ると考えたりもする思い出の1本である。

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