実験室KR-13
監督:ジョナサン・リーベスマン
出演:ニック・キャノン/クレア・デュヴァル/ティモシー・ハットン/クロエ・セヴィニー/ピーター・ストーメア/シェー・ウィガム
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【生き残るのは誰だ!?】
かつてCIAが極秘裏に実施していたという「MKウルトラ」。大統領令によって禁じられ、本当におこなわれたのかどうか証拠すら残っていないこの洗脳実験は、だが、いまもなお続けられていた……。責任者Dr・フィリップスと、新たにスタッフとして参加することになった表情分析の専門家エミリーが見守る中、閉鎖された白い部屋に集められたのは4人の男女。彼らは“候補者”として、恐怖のサバイバル・ゲームへと臨むことになる。
(2009年 アメリカ)
【真の恐怖とは何か】
舞台は実験室とコントロール・ルームにほぼ限定されている、小さなソリッド・シチュエーション・スリラーだ。が、この規模の映画の割に出演陣は意外と豪華。
ニック・キャノンは『デイ・オブ・ザ・デッド』の軍人より、こっちの気の弱そうな兄ちゃんがあっている。『パッセンジャーズ』のクレア・デュヴァルは意外な扱われかたで観る者を驚かせ、『シークレット ウインドウ』のティモシー・ハットンは静かな腹黒さ&やさぐれ感を噴出。『ゾディアック』のクロエ・セヴィニーが目を泳がせ、『シャッフル』のピーター・ストーメアは相変わらず胡散臭さたっぷり。
スリラーの間(ま)や空気に慣れた面々が、堅実な芝居を見せる。
撮りかたも、無機質な実験室やコントロール・ルームをことさらアーティスティックに捉えるのではなく、非対称、奥行き、広がり、何か越し、明と暗、引きと寄りなど、変化や動きのある絵で仕上げてある。『しんぼる』を思わせる舞台設定だが、あちらより人間的だ。
で、この手のお話では「どうやって抜け出すか?」が焦点になりそうなものだが、本作では一貫して「こいつら助からないな」という雰囲気が漂う。そして、わけのわからない実験に参加させられた恐怖より、人間がそもそも抱えているものを恐怖として炙り出していく。
すなわち、猜疑心、先入観、大義のための必要悪。9・11以降の米国に蔓延する「対テロ政策を進めるためには、少しばかり過激な価値観も是としよう」という人々の心情こそが恐怖だと述べるのだ。
もちろんラストでは、そのテーマに沿ったうえで「何のために、どんな人物を選抜するか」も明らかとなる。
ただ、そのラストへと物語を収束させるための説得力=集められた4人のキャラクターの違いが鮮明ではない。実験そのものも、恐怖感や面白味に欠け、実験手順はちょっと乱暴だ。
そのため「実施側の目的は何なのか?」と考える楽しみや、「ああ、それで彼は選ばれたのか」と腑に落ちるスッキリ感は少ない。
しっかり作られているし、役者もまずまず、テーマも興味深い。が、ちょっとしたディテール、人物の掘り下げを疎かにしてしまったため、惜しい仕上がりになってしまっている。
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