G.I.ジョー
監督:スティーヴン・ソマーズ
出演:チャニング・テイタム/マーロン・ウェイアンズ/シエナ・ミラー/レイチェル・ニコルズ/アドウェール・アキノエ=アグバエ/サイード・タグマウイ/レイ・パーク/クリストファー・エクルストン/イ・ビョンホン/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/ジョナサン・プライス/アーノルド・ヴォスルー/グレゴリー・フィットゥーシ/カロリーナ・クルコヴァ/レオ・ハワード/ブランドン・スー・フー/ブレンダン・フレイザー/デニス・クエイド
30点満点中17点=監3/話3/出3/芸4/技4
【秘密部隊が世界を救う】
巨大軍事企業MARSが開発した「ナノマイト」。数百万のナノ・ロボットが金属を喰らい尽くすというこの最新兵器をNATOへ輸送する陸軍のデュークやリップたちだったが、デュークの元恋人アナが率いる謎の一団に襲撃される。秘密部隊G.I.ジョーの救援で「ナノマイト」は無事だったものの、なおも執拗に攻め手を伸ばすテロリストたち。実は裏で糸を引いているのは、恐怖と力で世界征服を企むMARSだった。
(2009年 アメリカ/チェコ)
【軽い純アクション】
世代的には「変身サイボーグ1号」から「ミクロマン」の人間なので、本作の元となったG.I.ジョーに思い入れはない。たぶん米国でも懐かしさやトキメキを感じるのはちょっと上の世代、この手の映画はあまり観ない層なんじゃないだろうか。
この手の映画=リアリティを無視した純アクション。「武器商人はただ武器を売るのではなく戦争を作る」といった真理を盛り込みながらも、基本的には善玉と悪玉をシンプルに対立させてわかりやすぅい展開で進む。軽めのサントラと細かくて速いカットワークによるスピード重視の作りだ。
序盤の銃撃戦、基地への急襲、CGをふんだんに駆使してぶっ潰されるパリ市街、海底に空中と、バトルはバリエーション豊か。回想ではカンフーやアフリカ戦線も挿入される。VFXもSFXも頑張っているし、クライマックスは見せ場を平行して描くことで上手くスリルを煽っている。
で、そんな中に感じるのはDNA。
砂漠の地下や海底に造られた秘密基地、銃弾を跳ね返す装甲、ナノテク兵器にマインド・コントロール。ストームシャドーやスネークアイズといったネーミング、マッドサイエンティストの登場、ニンジャの活躍、妙に原始的なトレーニングや精鋭のはずなのに意外と弱い隊士たち……。
これら現実離れした設定やバカバカしい展開は、軍事ヒーロー・アクションに脈々と受け継がれる“らしさ”だろう。
インチキ臭い東京、日本と韓国の混同、ゲームを意識した見せ場、「TVシリーズでサイド・ストーリーをやるつもりだな」、「あわよくば続編を作る算段だな」、「オモチャを売りたいんだな」と思わせる描写や道具立てもまた、ハリウッドならではだ。
剣戟&銃撃アクション場面や海中戦闘艇の撮りかたには『スター・ウォーズ』っぽさもあるように思う。
いってしまえば、いままで積み上げられてきたものの寄せ集め、どこかで観たような的=“薄っぺらさ”に満ちているわけだが、その範囲内ではスピーディかつスマートにまとめてある、といったところだろうか。
あと、惜しいのはキャスト。
デューク役のチャニング・テイタムは、ネーム・バリューこそないものの軍人っぽさはそこそこあって、軽めのアクションにはハマっているだろう。だがリップ役のマーロン・ウェイアンズは軽すぎ、アナ/バロネスのシエナ・ミラー(本作でラジー賞受賞)とスカーレットのレイチェル・ニコルズは、アクションに身体がついていっていないうえに華も足りない。カッコよさというか、その役でそこにいる意味を感じさせるのはイ・ビョンホンくらいじゃないか。
だいたい、いちばん知っている顔が(デニス・クエイドとノンクレジットのブレンダン・フレイザーを除いて)サイード・タグマウイって、どういうキャスティングなんだ。
ま、「古いモノから新しいシリーズを作る、その第一弾」として、他のアクションもので手垢のついていない新星を育成する、ということも考えているのだろう。作品じたい2010年ラジー賞候補になった(受賞は『トランスフォーマー:リベンジ』)ようだが、バカバカしいけれど退屈はしないし楽しさもある映画だから、続編には、DNAを生かしたうえで物語&作り&キャラクターが成長してくれることを期待しよう。
といいつつ、次回作の設定が「ホーク司令官の息子が敵役で登場」「ストームシャドーがサイボーグ化して復活」といった、やはり既視感のあるものになるという予想に1000ペリカ。
●主なスタッフ
撮影監督は『トランスフォーマー』や『ウォンテッド』のミッチェル・アムンゼン、プロダクション・デザインは『X-MEN:ファイナルデシジョン』のエド・ヴァリュー、サウンド・チームには『イーグル・アイ』のカレン・M・ベイカーとペール・ホールバーグ、編集は『ハムナプトラ』シリーズのボブ・ダクセイ。やっぱり“この手の映画”に慣れた人が揃い、いかにもな仕上がりである。
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