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2011/10/14

湖のほとりで

監督:アンドレア・モライヨーリ
出演:トニ・セルヴィッロ/デニス・ファソロ/ネッロ・マーシア/ジュリア・ミチェリーニ/マルコ・バリアーニ/ファウスト・マリア・スキアラッパ/フランコ・ラヴェラ/サラ・ダマリオ/ハイジ・カルダート/アレッシア・ピオヴァン/ニコール・ペローネ/アンナ・ボナイウート/オメロ・アントヌッティ/ファブリツィオ・ジフーニ/ヴァレリア・ゴリノ

30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3

【死体が明かす、眠っていた秘密】
 小さな町に隣接する小さな湖のほとりで、若いアンナの全裸死体が発見される。抵抗した跡は、ない。サンツィオ警部は捜査の過程で、アンナの恋人ロベルト、第一発見者で頭の弱いマリオとその父、アンナがベビーシッターを務めていたアンジェロの両親・カナーリ夫妻、姉シルヴィアや取り乱す父らと接触する。さらに浮かび上がる、アンナが抱えていた、ある秘密。みんなに好かれていたという彼女は、なぜ、誰に殺されたのか?
(2007年 イタリア)

★ややネタバレを含みます★

【悪くはないが、もっといい映画になったはず】
 静かに牧歌的に自然を捉えて、けれどどこか危険な空気も漂う、そんなオープニングからスルスルと物語へ引き込んでいく。
 以後も、別の場面の音を現シーンに乗っけたり、現実と回想をクロスさせたり、オーバーラップによって時間経過を示したりなど、テンポの作りかたと語り口には澱みがない。

 ストーリー的には事件の真相・真犯人を追うことが軸となるが、底辺にあるのは、親と子というテーマ。事件に関わる人間(容疑者)たちは例外なく親子という関係がキーとして描かれており、それがサンツィオ警部と娘フランチェスカとの関係にも影響を与えていく。
 事件とパーソナルな部分とを結びつける構造、ヒネったセリフ、芝居、静謐な流れなどがもたらすトータルな空気感は、悪くない(電子音系のサントラはやや耳障りだが)。

 が、最後を「これこれこうでした」でまとめてしまったのが難。観客を置いてけぼりにしたまま、とまではいかないが、解決へとつながる発見・気づきの描写がサラリとしすぎていて、糾弾と告解がいきなり始まるという印象を与えている。
 真相と真犯人、アンナがやろうとしたこと、そこに渦巻く悔恨と怒りなどは十分に納得できるものだけに、性急に話を閉じたことが悔やまれる

 思うに、謎解きモノの雰囲気を前面に出しすぎたことが失敗。
 父親がアンナに注ぐ偏執狂的な情愛、それを見て育った姉シルヴィア、ぐうたらなロベルトを見守る母親、カナーリ夫妻と息子アンジェロとの間にあった苦しみ、マリオと父親との愛憎、そして、娘フランチェスカとの接しかたに悩むサンツィオ警部……といった、まさしく「親と子」というテーマ部分をより掘り下げる方向でストーリーと描写を整理し、その中で「親の側が子どもをどう考えているか」が浮かび上がってくる内容にするべきだったのではないか。

 もちろん、アンナがアンジェロに寄せていた擬似母性を強く炙り出し、警部とアンジェロの母親との会話もわかりやすく展開させ、この事件以前の犠牲者、この事件の犠牲者、真犯人、その家族の感情を1本の線としてスッキリ貫くことも必要。
 そうすれば、もっともっと心に染み入る作品になったはずだ。

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