グッド・バッド・ウィアード
監督:キム・ジウン
出演:ソン・ガンホ/イ・ビョンホン/チョン・ウソン/ユン・ジェムン/リュ・スンス/ソン・ヨンチャン/オ・ダルス/イ・チョンア/キム・グァンイル/マ・ドンソク/ヨ・キョンフン/イ・ハンス/カン・ヒュンジョン/イ・サンミン/ソン・ビョンホ/白竜
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4
【入り乱れての大銃撃戦&追跡劇】
日本軍が朝鮮半島支配を進めていた頃の満州。馬賊の首領パク・チャンイは一味を率いて列車を襲撃、日本の銀行総帥から1枚の地図を奪い取ろうとする。が、チャンイを狙う賞金稼ぎパク・ドウォンと撃ち合いになり、さらにはコソ泥のユン・テグに地図を持ち去られてしまう。「これぞ清国が隠した財宝のありかを示す地図」と浮かれるユン・テグのもとへ、闇市の悪党どもに日本軍、チャンイ、そしてドウォンが殺到するのだった。
(2008年 韓国)
【ボーダーレスの大活劇】
監督いわく「キムチ・ウェスタン」。その名の通りの韓国製西部劇だが、多民族が入り乱れ、舞台のほとんどが荒野とバラックだらけの街、無国籍なテイストに満ちていて、かなりマンガチック。
クレジットにある「オリエンタル・ウエスタン」か、あるいは「ボーダーレス・ウエスタン」と呼ぶのがふさわしい仕上がりである。
まずはセカンド・オープニング、延々と続く線路を走る列車がダイナミックに捉えられて、そのスケール感で圧倒する。以後も弾薬と手間ひまと金とをふんだんに使いながら、迫力のアクションを小気味よく畳み掛けていく。
基本は純西部劇風のガン・バトル。二挺拳銃とショットガンが火を噴きまくる。そこへナイフやロープも絡め、後半には馬とサイドカーとジープと迫撃砲の追跡劇。アクションのバリエーションは多彩だ。
SFXとスタント・チームの頑張りにも拍手を贈りたいところ。一場面たりとも手を抜かず、迫力と痛みとを感じさせてくれる。
移動撮影、真上からの見下ろし、グっと寄り、場面を広くうつし、あるいはドアップと、アングルやカメラワークも多彩。血しぶきや土塊をレンズに受けながら銃撃と格闘の中へ突撃し、臨場感を醸し出す。色合いには深みとシャープさがあり、陰影も豊か。セットを贅沢に造っては潰してしまう。
列車に急ブレーキがかかったので倒れながら乱射する場面、窓の向こうからターザンのように突っ込んでくる悪党、一瞬で大ボスに反撃するチャンイなど、あるときは細かくカットを割ってスピード感を創出し、あるときは1カットでスリルを増長させて、演出・まとめ的な上手さもたっぷり。
キャストがまたいい。
コミック・リリーフもシリアスも自由自在のソン・ガンホが、ユーモアを交えつつ、その鈍重そうな顔からは想像できない軽い身のこなしで“変人”ユン・テグを演じる。正統派チョン・ウソンも、野性と落ち着きとインテリジェンスがミックスされた“善人”ドウォンにふさわしい。そして、もはや揺るぎないキャリアを築いたイ・ビョンホンは、どこか楽しそうに、冷酷ながらも苛立ちを抱えた“悪人”チャンイになりきる。
このハマリ具合とキャラクターのバランス、彼ら主要キャストが大半のアクションを自身でこなしていることで生まれるリアリティも本作の魅力の1つだろう。
全体に“格”のある見た目、面白さにあふれるカット/シーンの連続で、飽きさせることも安っぽさを感じさせることもない。韓国映画史上最高の製作費が注ぎ込まれた(その割には20億円くらいみたいだが)、その事実に恥じない作品になっているんじゃないだろうか。
ただ、凄いアクション、凄い特殊効果、それをふんだんに見せたいという思いに自ら酔ってしまって、各シークエンスがやや長めになってしまっている印象はある。サントラは、作品の雰囲気にはまずまず合っているものの作品のスケールには達していない感じ。「Moonlight Serenade」も、舞台となっている時代を考えればはちょっと早すぎるのではないか。
大ボスの金庫には不用意にもカギがかけられていないなど都合のよさも見受けられるし、クライマックスへの持っていきかたはかなり強引。主演三人の“腕前の確かさ”の描写(とりわけ、どんな窮地からも生き延びてしまうユン・テグのバイタリティ)も不足しているといえる。
そうしたキズはあるとはいえ、痛快で、牽引力もあって、想像以上によく出来ていた映画だと思う。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント