ノウイング
監督:アレックス・プロヤス
出演:ニコラス・ケイジ/チャンドラー・カンタベリー/ローズ・バーン/ララ・ロビンソン/D・G・マロニー/ナディア・タウンゼンド/アラン・ホップグッド/エイドリアン・ピカリング/ダニエル・カーター/アリシア・マクグラス/ベン・メンデルソーン
30点満点中17点=監3/話3/出3/芸4/技4
【人類の運命は動かせないのか】
ケイレブの通う小学校でタイムカプセルが50年ぶりに掘り起こされ、中から1通の手紙が見つかった。ケイレブの父、MITで教鞭をとる科学者ジョン・ケストラーは、手紙に書かれている数字の羅列が過去50年間に起きた大事故の日付と犠牲者数だと気づく。ホテル火災で妻を亡くして以来、生きることに意味を見出せないでいたジョンだったが、新たに起きるはずの3つの惨事を防ごうと奔走する。だが“その時”は着々と近づいていた。
(2009年 アメリカ/イギリス/オーストラリア)
★ややネタバレを含みます★
【見せかたは上手いが、発想は古い】
撮影は、陰影も臨場感も豊か。BGMとノイズとSEが入り混じったオープニングに代表されるように、音関係の処理にも力が入っている。
ケストラー家の侘しい雰囲気を作り出した美術、ひと目で時代がわかる&ジョンの冴えないやもめ暮らしを感じさせる衣装、旧時代的な不協和音で盛り上げるサントラも効いている。
炎立ちのぼるVFXやSFXにもスピード感と迫力がある。
パーツはかなり良質だ。
ルシンダが変わり者だということを示すクラスメイトの視線、光を用いたシーン遷移など、映像でわからせる&ワクワクさせる意識が徹底された演出もまずまず。あの大事故を1ショット長回しで表現したシーンには「どうだっ!」という気概を感じるし、ジョンとケイレブの間で交わされる手話の扱いも上手く、たとえば『フラガール』にあったような“頭の悪さ・クドさ”がない。
反面、ウサギ、ディスカバリー・チャンネル、ホットドック、ジョンと父との関係などストーリーへの味つけは多すぎるようにも思うし、それを取ってつけたようなセリフで示すマズさもある。
いきなり数字の秘密に気づいちゃったなぁ、ケイレブとアビーはなんだか簡単に“納得”してしまったなぁ、もっと上手に危機を社会に伝える方法だってあるだろう……と、強引さも目につく。あれだけの科学力があれば太陽フレアを防げそうな気もするし。
だがまぁ「この世の中は哀しい偶然でできていて、生きることに目的も意味もない」と感じていたジョンが、「息子のためにできることをやろう」と立ち上がるアクセク感はスッキリと出ている。
だから全体として、そう悪くない仕上がりだといえる。
ただ、いまさらこのネタをやる意味があるのか、という印象は拭えない。とりわけ、ノストラダムスも仏教もキリスト教もエヴァもいっしょくたに消化しているわれわれ日本人的感覚からすると、存在論と決定論とアカシックレコードと箱舟とをゴッチャにして提示されても「うん、これって20世紀的な物語だよね」と感じてしまうのだ。
彼らのデザインだって『時の支配者』から進歩していないし、星野之宣でさんざん味わったような雰囲気もあるし。
要は「新しい何かを観た」というカタルシスに欠けるのだ。
見せかたは上手いので「面白い映画」にはなっているけれど、アイディアの古さのせいで「それ以上のモノ」には至っていない、といったところか。
●主なスタッフ
撮影は『アンダーワールド:エボリューション』のサイモン・ダガン、編集は『アイ,ロボット』のリチャード・リーロイド。
プロダクションデザインは『ザ・デンジャラス・マインド』のスティーヴン・ジョーンズ=エヴァンズ、衣装は『キング・コング』などのテリー・ライアン。音楽は『ハート・ロッカー』などのマルコ・ベルトラミ、サウンド・デザインは『奇術師フーディーニ~妖しき幻想~』のマイケル・マクメノミー。SFXは『かいじゅうたちのいるところ』のアンジェロ・ソヒン、VFXは『300』のアンドリュー・ジャクソンと『スパイダーマン2』のエリック・ダースト。
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