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2011/11/28

ロフト.

監督:エリク・ヴァン・ローイ
出演:ケーン・デ・ボーウ/フィリップ・ペータース/マティアス・スーナールツ/ブルーノ・ヴァンデン・ブルーク/ケーン・デ・グラーヴェ/ヴェルル・バーテンス/ティン・レイマー/アン・ミレル/シャルロッテ・ファンデルメールシュ/ヴィーネ・ディエリックス/マーイケ・カフメイエル/マリエ・ヴィンク/ジャン・デクレール/ジーン・ベルヴォーツ

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【そのロフトで“事”は起こった】
 川岸に建つマンション、ロフトの鍵を持つ男たち。この部屋を設計したビンセント、彼の友人であるクリスとフィリップ兄弟、そしてルクとマルニクスだ。5人はみな家庭を持っていたが、それぞれ秘密の逢瀬のためにロフトを利用していたのである。だがある朝、ロフト内のベッドで女性の死体が発見される。誰の仕業か? それとも5人以外の人間が彼らをハメようとしているのか? やがて、意外な真相と憎悪とが解き明かされることとなる。
(2008年 ベルギー)

★ややネタバレを含みます★

【構成力と雰囲気作りで、興味深く見せる】
 大雑把にいえば「これこれこうでした」系のお話であり、若干の強引さもあるのだけれど、真相を終盤でドドドっと性急に説明する愚は犯さず、上手にまとめてある

 事件の1年前、数か月前、前夜、死体発見の朝、取り調べ、結末など複数の時間を目まぐるしくジャンプする入り組んだ構成が、まずは正解。怪しげな人物・出来事・事情が少しずつ積み重ねられ、各人の関係や思惑が解き明かされていく展開が、興味を惹く。
 どこか腹黒いビンセント、生真面目なクリス、自堕落なフィリップ、内向的なルク、空気を読まないマルニクスと、5人のキャラクターのバランス・配置も上々。その性格が「ただの性格」にとどまらず、ちゃんとストーリーを動かすモトにもなっている。

 もう少し「ひょっとして妻たちの仕業?」「意外とこいつが大きく関わっているのか?」などと裏読みさせるミス・ディレクションや5人の夫婦生活の描写があってもいいとは思うが、底辺に“情念”というものを置くことで筋の通ったストーリーにはなっているといえるだろう。

 スパっと時制を変えるフラッシュバック、カチっと出来事を見せる部分、短くカットを畳み掛ける箇所、グワングワンと動いて焦りを表すカメラ、俯瞰やクローズアップなど、見せかたも多彩かつ適確で良質。
 鋭角なデザインのマンションや殺風景な中に背徳の香りも漂うロフトといった美術、しじゅう鳴り響いてダークな空気を醸し出すサントラともあいまって「不可解で、決して表沙汰にはできない事件に巻き込まれた男たち」の様子を雰囲気たっぷりに炙り出している。

 また、前述の通り下手に「こういうことだったんだな」とセリフで説明するのではなく、ポイントとなる伏線・場面=映像を拾い上げて再提示するクライマックスは、ありふれた手法ではあるものの、映画的な処理であり、テンポもいい。

 まぁ同種の作品では『キサラギ』『アンダー・サスピション』あたりのほうが面白さや深さでは上だと思うが、シャープに、スマートに、スタイリッシュに、意外性に満ちた事件の顛末を興味深く見せてくれる映画ではあるだろう。

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