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2011/11/04

ミッション:8ミニッツ

監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ギレンホール/ミシェル・モナハン/ヴェラ・ファーミガ/ジェフリー・ライト/マイケル・アーデン/キャス・アンヴァー/ラッセル・ピーターズ/ブレント・スカグフォード/クレイグ・トーマス/ゴードン・マステン/スーザン・ベイン/ポーラ・ジーン・ヒクソン/リンカーン・ワード/カイル・ゲートハウス/アルバート・クワン/フレデリック・デグランプレ/スコット・バクラ(声の出演)

30点満点中19点=監3/話4/出4/芸4/技4

【その8分間で、何ができるか?】
 シカゴへと向かう列車が爆破され、数百人が命を落とす。だがそれは、連続テロの第一弾に過ぎない。米軍は死者の生前の記憶を再構築する最新システムを用い、犠牲者のひとりである教師ショーンの意識の中へスティーヴンス大尉を送り込む。与えられた時間は爆破までの8分間。スティーヴンスは何度も時間を“戻り”、ショーンの同僚クリスティーナ(彼女もすでに死んでいる)からの不審の目を誤魔化しながら爆破犯の正体を探る。
(2011年 アメリカ/フランス)

【抗いがたいものを相手にした命のやりとり、という想い】
 前作『月に囚われた男』で鮮やかかつ鋭角的なSFマインドを示し、当方の心を鷲掴みにしたダンカン・ジョーンズ。今回もまた、ソリッドな状況下で悪戦苦闘する男を主人公に、面白い映画を送り出してきた。

 設定としては、よしづきくみち作のコミック『君と僕のアシアト~タイムトラベル春日研究所~』に似ていて、それほど驚きはない。また、スティーヴンスがクリスティーナに惚れてしまう展開はやや強引に思える。
 演出的にはオーソドックスな雰囲気で、前作にあったキリキリヒリヒリとした空気より、メジャー・エンターテイメントらしいスピード感を重視しているイメージだ。
 正直なところ、『月に囚われた男』を超えるどころか並ぶ域にも達していないといえるだろう。

 ただ、映画的なまとまりは上々
 安っぽいストーリーなら、もっと主人公が戸惑ってしまったり、クドクドと設定を説明したり、これでもかとタイムパラドックスを放り込んできたりするところ。だが、観客を置いてけぼりにしない程度の配慮は見せながらも下手な説明は省いてしまい、枝葉もスティーヴンスと父の関係など最小限のものだけ残してバッサリ切り落としてある。あくまでも「急いで真犯人を見つけ出さなくてはならない登場人物(米軍)たち目線」で事を進め、疾走感を作り出すのだ。

 列車内や研究室、スティーヴンスが閉じ込められているカプセル内をしっかり作り上げた美術、いかにもこれからSFサスペンスが開幕しますよというテーマ・ミュージック、サウンドメイク、VFXなど、全体に作りは手堅くて、上手く作品世界へ没入させてくれる。

 ともすればB級のレッテルを貼られかねない物語に、芯を与えて作品の格を上げた役者たちの功績も大きい。ジェイク・ギレンホールの焦り、ミシェル・モナハンの美貌、ヴェラ・ファーミガの静かな苦悩、いつもより鈍重に見えるジェフリー・ライトなど、いずれもプロの仕事だ。

 そういう外見部分を離れて中身に目をやった場合、何より嬉しいのは、底辺に流れている“想い”のようなものが『月に囚われた男』と共通していることだ。
 それはいわば「運命やシステムといった抗いがたいものを相手にした命のやりとり」。もうどうしようもない悲劇的なシチュエーションにあって、それでも成功や永遠や成就を願ってジタバタし、それしかないラストを引き寄せる“人の愚かしさと愛おしさと強さ”が根っこにあるからこそ、この人の映画に惹かれるのだということを再認識させてくれる。

 爆風に巻き込まれて死へと至る、というカットをロマンチックに描いてしまうあたりにも「死と引き換えにしたリスタート」に対する甘美な(あるいは切実な)憧れが漂う。
 ある意味では“甘さ”の残る締めかた(ストーリーとしてのツメが甘いというワケではなく、少々ファンタジックという点で)なのだが、それがシラケたムードにならないのは、このエンディングを単なるオチではなく「人の想い」として扱っているからだろう。

 配給会社が用意した宣伝文句は「警告:このラスト、映画通ほどダマされる。」。だが、そこから嗅ぎ取れるダマシ系の要素は、本作にはないといっていい。でも確かに、あれやこれやとヒネった展開を予想したり意外な真犯人を探してしまうような映画通は、肩透かしを食らってしまうことだろう。
 とすれば、意外と正しいキャッチ・コピー。下手な考えの向こう側にある一途なスティーヴンスの行動を見守ることで、素直に感動したり、僕ら自身の最期についてささやかな希望を見出せる、そんな映画かも知れない。

●主なスタッフ
 脚本ベン・リプリーはB級のビデオムービーなどを出がけてきた人物で、これが出世作になるか。
 撮影は『ザ・ウォーカー』『魔法にかけられて』のドン・バージェス、編集は『Ray/レイ』のポール・ハーシュ。
 プロダクションデザインは『デイ・アフター・トゥモロー』のバリー・チューシッド、衣装デザインは『ブラインドネス』『ファウンテン 永遠につづく愛』のレネー・エイプリル。
 音楽は『デュプリシティ~スパイは、スパイに嘘をつく~』『ダークナイト』に関わったクリス・ベーコン。サウンドデザインは『エピソードI』『NEXT-ネクスト-』のトム・ベルフォート。
 VFXは『ブロークバック・マウンテン』などのルイス・モリン、SFXは『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のライアル・コスグローヴ、特殊メイクは『300』のエイドリアン・モロー、スタントは『ザ・タウン』などのリック・ルフェイヴァーや『デス・レース』などのスティーブン・レフブルら。

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