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2011/12/19

ボルト

監督:バイロン・ハワード/クリス・ウィリアムズ
声の出演:ジョン・トラヴォルタ/マイリー・サイラス/スージー・エスマン/マーク・ウォルトン/マルコム・マクダウェル/ジェームズ・リプトン/グレッグ・ジャーマン/ディードリッヒ・ベイダー/ニック・スワードソン/クロエ・モレッツ/ロン・モス/グレイ・デリル
吹き替え:佐々木蔵之介/白石涼子/江角マキコ/天野ひろゆき/中村秀利/東地宏樹/山路和弘/龍田直樹/梅津秀行/三村ゆうな

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4

【タレント犬は彼女のもとへと走る】
 ドクター・キャリコの悪事を阻止すべく、ペニーとともに戦う白いサイボーグ犬、ボルト。もちろんそれはTVの中の話。だがボルト自身は自分のことを本当のスーパードッグだと信じていた。キャリコに拉致された(という設定の)ペニーを救うべく撮影所を飛び出したボルトは、ネコのミトンズやハムスターのライノと出会い、自分が「ただの犬」だと知る。それでもペニーは待ってくれているはずと、ひたすら西への旅を続けるのだが……。
(2008年 アメリカ アニメ)

【見た目も内容も良】
 ピクサーとディズニーの和解(?)後に作られた、非ピクサー製ディズニーアニメの第一弾となる作品。製作にはジョン・ラセターがタッチし、監督は『リロ&スティッチ』などに携わってきたバイロン・ハワードと、『ルイスと未来泥棒』などに関わったクリス・ウィリアムズ、脚本は『カーズ』のダン・フォーゲルマン。

 オープニング~作品内作品の大アクションが、まずは上質。ちょっと長くてやりすぎの感もあるけれど、つかみとしては実に華やかだ。
 以後のシーンも含めて、全体にスピード感は豊か。とりわけクライマックス、ボルトがペニーの危機を察知してスタジオへ入り込む際の流れのよさが素晴らしい。サントラ(『ボーン』シリーズや『ハッピーフィート』のジョン・パウエル)と、そのオン/オフで作られるリズム感も上々だ。

 またカメラワークを中心とした“見せかた”にも気を遣っているような作り。犬が主人公であることを意識してかローアングルが多用され、観る者をボルトと同じ視点に置く。かと思えば俯瞰もたっぷりと入れて、お話の全体像を示すことも怠らない。クローズアップもスローも取り入れ、見た目的なリズムの向上に注力していると感じさせる。
 もちろん、ビル街、動物たちの毛並の照り、ハトの挙動など、作画レベルや美術レベルでのリアリティは高く、そこに「人間も擬人化された動物たちも、表情を大切にした演技をする」というアニメらしい演出プランが溶け込んで、楽しい仕上がりとなっている。

 前のシーン(スーパー・ドッグとしてのボルトの活躍)を道中でなぞるような展開は妥当だし、再会シーンの切なさ、スーパーボイスの扱いに関しては涙モノ。ペニーのケータイが鳴ると寂しがるボルトの様子から「ああ、いつもそれがお別れのサインなんだな。おたがいホントに好きなんだな」とわからせる描写の妙や、人と犬との関係・幸せへとお話をまとめ、それを説教臭くならないよう「普通の犬でいることって素晴らしい」という方向でサラリと収束させた手際もいい。

 ボルトの声はジョン・トラヴォルタ、吹き替え版では佐々木蔵之介と、いずれもオッサンがアテているわけだが、最初は「あれっ」と感じたこのキャストが、テーマと関わっていると気づけば納得もいく。
 つまり「実はもういいオトナになっている犬だけれど、ひたすら『僕の人間』に愛情を示す単純で可愛いヤツ。いっぽうで自分の価値判断で動くこともできるはずで、そういう存在に“ウソ”で接するのは失礼であり、人と犬との関係・幸せという観点からは間違っているんじゃないか」ということ。

 イメージとしては、『カーズ』の「暴走しがちな主人公が、他者や現実世界との関わりの中で自分の居場所を見つけていくロードムービー」というテイストに、純ディズニーの「この世界で綿々と生き続ける温かさ」風味を上手に加え、しかもコンパクト&流れよくまとめてみせた良作である。

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