マイマイ新子と千年の魔法
監督:片渕須直
声の出演:福田麻由子/水沢奈子/森迫永依/松元環季/江上晶真/中嶋和也/川上聡生/西原信裕/冨澤風斗/瀬戸口郁/喜多村静枝/関貴昭/海鋒拓也/脇田美代/奥田風花/小山剛志/塚田正昭/本上まなみ/野田圭一/世弥きくよ/竹本英史
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技3
【人の世は千年続く】
お転婆で想像力もたくましい小学三年生の青木新子が暮らすのは、瀬戸内の田舎町。麦畑を縫って直角に流れる川、あるいは牛車や馬車が通る道は、千年も前からこの地にあるという。東京から転校してきた島津貴伊子とともに、千年前ここにいたはずの姫様を思い描く新子。喘息を患う大好きなお爺ちゃん、迷子になった妹の光子、綺麗なひづる先生、小さな池で飼いはじめた金魚、警察官の息子タツヨシらに囲まれたのどかな日々の中で……。
(2009年 日本 アニメ)
【惜しい仕上がり】
人と人はタテにもヨコにもつながっている。ただし、自分と関わる人のすべてを理解できるわけではない。わずかに見える部分を頼りにその人の内側までを判断するしかないのだ。そんな曖昧で不確かな“つながり”の中で暮らしながら、経験を重ね、誰に何をどれだけ見せるかについて、自分なりの価値観を養っていく。そうして出来上がるのが、社会であり個人史である。
恐らく、落としどころはこういうことなんだと思う。
新子世代は、現代では祖母世代にあたるはず。息子や娘や孫といっしょに鑑賞し、当時と現在との違い、当時から現在への流れを語り合うことで、やはり家族内での「タテとヨコ」を意識することになるだろう。そんな機能を持つ映画だといえる。
当然、ノスタルジー色たっぷりに往時を描き出す。
美術(上原伸一)と音楽(村井秀清、Minako "mooki" Obata)が中心となって作るのは、広がる自然、ゆっくりと流れる時間。その中で、亀を散歩させたり、色鉛筆やラジオドラマに胸をときめかせたり、子どもたちがどんなふうに子どもたちであったのかがディテール豊かに描写される。
転がったり飛び跳ねたりの細かな動きは上質で、アングルも上から下からと多彩、カメラはダイナミックに動きつつ「見守り視線」を保つ。土との近さと、まさに「見える範囲は限られている」ことを示す下半身だけのカットが頻出するのも印象的だ。
また、明るすぎるほど陰影の少ない序盤に対し、徐々に陰や夜のシーンが増える終盤、という構成は、新子たちが少しずつ思春期~大人へと近づくことを示すものだろう。
と、作りとしては、なかなか。幼いイロっぽさの上に少女らしい健気さが乗っかる福田麻由子をはじめ、朴訥としながらも全体に「等身大」であることを貫く声の出演陣も悪くない。
ただ、ストーリー的にはフワリとしすぎの感。というか、本作のテーマであるはずの“つながり”が甘いように思える。
あれだけ「好き」といっておきながらお爺ちゃんはフェードアウト。過去と現在の連続性はファンタジーにとどまり、新子と貴伊子の関係も十分に描かれているとはいいがたく、新子が大人社会やタツヨシに寄せる期待もあやふやなままだから、後半部の展開がやや性急に感じられてしまう。
つまりは思い出のパッチワーク的な流れであり、それを1つのカタチ=テーマとして伝えるだけのパワーや物語としての魅力には欠ける印象だ。見た目の作りはいいだけに、惜しい仕上がりである。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント