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2011/12/15

ATOM

監督:デヴィッド・バワーズ
声の出演:フレディ・ハイモア/ニコラス・ケイジ/ビル・ナイ/ドナルド・サザーランド/クリスティン・ベル/ネイサン・レイン/モイセス・アリアス/マデリーン・キャロル/スターリング・ボーモン/サミュエル・L・ジャクソン/ユージン・レヴィ/ライアン・スタイルズ/マット・ルーカス/デヴィッド・バワーズ/エル・ファニング/アラン・テュディク/シャーリーズ・セロン
吹き替え:上戸彩/役所広司/西村知道/土師孝也/林原めぐみ/内海賢二/阿部敦/かないみか/宮原永海/加瀬康之/山寺宏一/富田耕生/三木眞一郎/三宅健太/愛河里花子

30点満点中15点=監4/話1/出3/芸3/技4

【ロボットとして生まれ変わった少年】
 空に浮かぶメトロシティ。ロボット工学の権威・テンマ博士は軍の命令で戦闘用ロボット「ピースキーパー」を製造、お茶の水博士が開発したエネルギー源「ブルーコア」で動かそうとする。だが選挙を控えて功を焦る大統領が凶悪な「レッドコア」を与えたためピースキーパーが暴走、テンマのひとり息子トビーが死んでしまう。トビーそっくりのロボットを作るテンマだったが、心の傷は癒せず、ロボットのトビーは家を飛び出すのだった。
(2009年 香港/アメリカ/日本 アニメ)

【行き当たりばったり】
 早い話が“あっち版の鉄腕アトム”。
 監督・脚本は、ぐっちゃぐちゃの楽しさに満ちていた『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』のデヴィッド・バワーズだ。また、製作段階から手塚サイドによる細かなチェックが入っていたと記憶する。英語版・吹き替え版(今回は吹き替え版での鑑賞)ともに豪華すぎるほどの声優陣を起用し、意気込みもうかがえる。
 にもかかわらず、デキとしてはイマイチ、またはイマニ。

 浮遊感・重量感・スピード感をしっかりと再現した動き、オリジナルのキャラクターや手塚流スター・システムへのリスペクト(ヒョウタンツギまで登場する)、VFXの鮮やかさ、エレクトロニクス勉強机や牽引ビームなどのガジェット類と、見た目としては、そう悪くない
 演出的には、アトム開発シーンが上々。兵器を改良し、髪の毛から遺伝情報を取り出してトビーの記憶をインプットし、あやつり人形に意志が与えられる……、という経緯を、下手な説明抜きで面白く見せてくれる。
 初飛行の場面やバトルには、単に飛ぶ・戦うだけでなく細かなネタも仕込まれている。

 が、キャラクターデザインというか、表情の演技がマズイ。どうも全人物が、何かに耐え忍び、苦虫を噛み潰した顔で全編押し通すものだから、パっとした華やかさが表出してこない。

 吹き替え版キャストでは、トビー/アトムの上戸彩は上手くて役柄にも合っており(実演技も声ももっと評価されていい女優だと思う)、その他の声優陣にも安定感があっていいのだけれど、役所広司は発声がコモっていてアニメ向けではないと感じるし、お茶の水博士はやっぱり勝田久にアテてもらいたかったところ。

 まぁそのへんは細かな不満。最大の問題は、そもそもの設定やストーリーだろう。

 用済みになれば捨てられるロボットの位置づけという重要テーマは軽く扱われ、メトロシティの社会システムと地上との対立も描写されぬまま。青も赤も破壊の限りを尽くすし、エンディングではいきなり未知の敵が出現。
 絶対悪である男がなぜ大統領になれたのか、テンマ博士はトビー・ロボットの何に違和感を覚えたのか、コーラの悩みはどれほどの深さがあるのか、キャラクター設定も曖昧だ。

 とにかく、社会学的な妥当性や科学的な整合性はゼロに近く、人物・出来事の背景はまったく見えてこず、お話としての面白味・斬新さ・意外性もなく、大人が楽しめる要素は皆無。行き当たりばったりに過ぎる。
 おかげで深みも広がりもワクワク感もなく、どれだけ作画や演出で頑張っても、ただぶぅわ~っと飛んでぎゃ~んと壊すだけの映画になってしまっている。

 かなりの赤字を計上したらしいが、それも無理ないと思わせる作品だ。

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