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2012/02/23

イングロリアス・バスターズ

監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ブラッド・ピット/メラニー・ロラン/クリストフ・ヴァルツ/ダイアン・クルーガー/ダニエル・ブリュール/ミヒャエル・ファスベンダー/イーライ・ロス/ティル・シュヴァイガー/ギデオン・ブルクハルト/B・J・ノヴァク/オマー・ドゥーム/サム・レヴァイン/マイケル・バコール/シルヴェスター・グロート/マルティン・ヴトケ/アウグスト・ディール/アレクサンダー・フェリング/クリスチャン・ベルケル/ドゥニ・メノーシェ/ジャッキー・イド/マイク・マイヤーズ/ジュリー・ドレフュス/ロッド・テイラー/リシャール・サムエル/ポール・ラスト/ボー・スヴェンソン

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【ナチス退治のバスターズ、その最終計画は?】
 アルド・レイン中尉に率いられたユダヤ系を中心とする米軍秘密部隊。欧州各地でナチスを狩り「バスターズ」と恐れられる彼らは、現地スパイと接触し、パリ市内でナチス高官を一網打尽にする計画を進めようとする。いっぽう「ユダヤ・ハンター」として知られる親衛隊ランダ大佐の手から辛くも生き延びたショシャナ。彼女が経営するパリ市内の映画館ではナチスのプロパガンダ映画『国民の誇り』のプレミアが開かれようとしていた……。
(2009年 アメリカ/ドイツ)

【リズム、意外性、おちょくり】
 欧州あるいは70年代作品を思わせるオープニングから、『エリーゼのために』とウエスタンをミックスさせた大胆な音楽へと移行。序盤、早くも無国籍感が漂う。そして、リアルタイムで出来事をジックリ捉える第1章。アクションもの(じゃないことは次第に明らかとなるけれど)とは思えぬ導入部だが、このヒリヒリとした空気は極上だ。

 その後の章も「1章1シーン/リアルタイム」が基本となるが、回想や想像やモノゴトの裏側、クリームのクローズアップやバツっと切られる編集などが混じるようになって、徐々にリズムを崩していく、という作り。
 静かな男が突然の変わり身を見せる。重要な役かと思わせておいてあっけなく死ぬ人物もいる。主役であるはずのアルドは、ほとんど何もしない。一応は「いま誰が、どういう狙いで何をしようとしているのか」をわかりやすく示しながらも、予想を裏切り続ける展開。

 暗い屋内から戸外をうつすカットは西部劇風。銃撃の中にグロがあり、ユーモアもある。『荒鷲の要塞』あたりの秘密部隊モノとか、『知りすぎていた男』などヒッチコック作品のエッセンスも取り入れ、説明字幕やナレーションもドカンと挿入。とにかく、一筋縄でいかないというか、既存の映画文法を嗤いながらオマージュも感じさせるというか、タランティーノらしい人を食った仕上がりだ。

 美術/セット、衣装、撮影と編集などスタッフの多くは監督の過去作でも腕をふるった面々。劇中映画の『国民の誇り』も面白そうだと思ったら、ドニー・ドノウィッツ役でタランティーノ・ファミリーともいえるイーライ・ロスがメガホンを取ったらしい。スタントのクレジットにはゾーイ・ベルの名も見える。まさにタランティーノ色。

 その安定した世界の中で、相変わらず「お前、何者やねん」的なブラッド・ピットはヤンキーに遊び、メラニー・ロランとダイアン・クルーガーはイロっぽく(特に『PARIS』でも美しかったメラニー・ロランの鎖骨のあたりのホクロが素敵)、クリストフ・ヴァルツは思ったより“怪演”ではなくストレートでオスカー受賞に納得の芝居。『わが教え子、ヒトラー』に続いてゲッペルスを演じたシルヴェスター・グロート、そのまんまヒトラーのマルティン・ヴトケも適役だ。

 そんなわけで、遊んだりおちょくったりしつも各方面へのリスペクトや映画文法の解体と構築も見せ、しっかりとした骨格も持つ映画。実をいうとタランティーノの「どう? どう? イケてるっしょ」という押しつけがましさは苦手だったりするのだけれど、これはそのパワーを面白さとして感じられた作品である。

●主なスタッフ
 撮影監督は『シャッターアイランド』のロバート・リチャードソン、編集は『デス・プルーフ』のサリー・メンケ。美術/セットは『フリーダムランド』のデヴィッド・ワスコとサンディ・レイノルズ・ワスコ、衣装は『オリバー・ツイスト』のアンナ・B・シェパード。

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