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2012/02/16

ウルヴァリン:X-MEN ZERO

監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヒュー・ジャックマン/リーヴ・シュレイバー/ダニー・ヒューストン/リン・コリンズ/ウィル・アイ・アム/ケヴィン・デュランド/ドミニク・モナハン/テイラー・キッチュ/ダニエル・ヘニー/ライアン・レイノルズ/ティム・ポコック/ジュリア・ブレイク/マックス・カレン/トロイ・シヴァン/マイケル・ジェームズ・オルセン/ピーター・オブライエン/アデレード・クレメンス/パトリック・スチュワート

30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4

【最強の男が誕生した理由】
 不老不死の肉体と鋭い爪を持つミュータントのジェームズは、同じ能力を授かった腹違いの兄ビクターとともに、南北戦争、ノルマンディー、ベトナムなど数々の戦場を彷徨っていた。やがてストライカー少佐に見出された彼らは、特殊能力者からなる秘密部隊の一員として働き始めるが、チームの非情さに嫌気が差したジェームズは離脱、恋人ケイラとカナダの山中でひっそりと暮らすようになる。しかし、ストライカーの野望が悲劇を呼ぶ。
(2009年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【強引さと軽快さ】
 人気シリーズ『X-MEN』サーガの主人公・ウルヴァリンが誕生した経緯を描く、いわゆるビギニングものの作品。正編とのつながりにも配慮しつつ、必要な出来事を余さず盛り込んで、要領よくまとめようとした結果、強引になっちゃったというイメージだ。
 幼いジェームズは簡単に自分の運命を受け入れちゃうし、秘密部隊に参加してすぐ抜けちゃう。ビクターの行動は都合よすぎだし、ストライカーのやり口も頭のいいものとは思えない。

 が、緩と急の連続で、わかりやすく、テンポよく見せるストーリーであることは確か。セリフのやりとりもちょっとヒネっていて、いちど引っ込めたキャラクターを再登場させるタイミングや果たさせる役割も軽快。粗野で、怒らせると何をするかわからないけれど、根はいいヤツ。そういうウルヴァリンのキャラクターが、観ている者に浸透しているのも大きい。復讐のため鬼と化す彼の様子に感情移入することもたやすい。
 このあたりは脚本デイヴィッド・ベニオフ(『25時』『マイ・ブラザー』)の力量を感じさせる。

 演出もテンポ重視。シームレスなシーン遷移を用いつつ、まず舞台を大きく綺麗に捉え、その中で愛憎劇と肉弾戦が繰り広げられる様子をダレることなく見せていく。
 とりわけアクションは、各キャラクターの特性を上手に生かしてあって及第点以上の仕上がり。ちょっとスローに頼った部分やワイヤー臭さが鼻につくところもあるけれど、クライマックスのスピード感や迫力などはなかなかのものだ。

 てっきりアクション系の監督だと思ったら『ツォツィ』の人。よくもまぁここまで毛色の異なるものを仕上げ切ったもんだ。ただ、このギャヴィン・フッドらしさというものを感じなくもない。
 この人、主要なテーマとして「踏み越えてはならない一線」があるんじゃないだろうか。『ツォツィ』もそうだったけれど、本作でも、殺してはならない善良な人たちを思いがけないタイミングでアッサリと死に追いやり、そのせいでウルヴァリンが怒り狂うという展開がある。またケイラには「ここであなたを殺したら、あなたと同じになる」というセリフを用意。

 そっとして欲しいのに、そこまでやるならこっちにも考えがある。そんなウルヴァリンの「一線を越えた者への怒り」を描こうとしたのなら、適役といえる監督なのかも知れない。

 さて、2013年公開予定の続編では「ウルヴァリンが日本の侍になろうとするエピソードも描かれる」んだとか。原作にもウルヴァリンは日本人女性と結婚していた設定があるらしいけれど、さすがにかなり不安。でもシナリオが『ユージュアル・サスペクツ』のクリストファー・マッカリーで、監督がダーレン・アロノフスキー(その後ジェームズ・マンゴールドに代わった模様)っていうなら、それはそれで観てみたい。

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