2012
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ジョン・キューザック/キウェテル・イジョフォー/アマンダ・ピート/タンディ・ニュートン/オリヴァー・プラット/トーマス・マッカーシー/リアム・ジェームス/モーガン・リリー/ズラトコ・ブリッチ/ベアトリス・ローゼン/アレクサンドル・ハウスマン/フィリッペ・ハウスマン/ヨハン・アーブ/ジョン・ビリングスレイ/チン・ハン/オスリック・チョウ/ブル・マンクマ/ジョージ・シーガル/スティーブン・マクハーティ/パトリック・ボーショー/ジミ・ミストリー/ダニー・グローヴァー/ウディ・ハレルソン
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【地球滅亡の日】
地質学者のヘルムズリー博士らは、間もなく地球規模の大災害が発生することを予見、アメリカなど各国の首脳は、人類の存亡を懸けたある計画をスタートさせる。いっぽうリムジンの運転手として働く無名作家ジャクソン・カーティスは、息子ノア、娘リリーとともにキャンプへ。そこで彼らは干上がった池と大規模な調査団を目撃する。やがて、頻発する地震と地割れ。マヤ文明が予言したという人類滅亡の日、2012年12月21日が近づく
(2009年 アメリカ)
【サイエンスじゃなくてオカルト】
エメリッヒが今回選んだ大風呂敷はマヤの予言、人類滅亡の日。一応はニュートリノだとか惑星直列だとかを持ち出してくるし、助ける人間をDNAで選別するってところは「フムフム」だけれど、全体としてはサイエンス・フィクションというよりオカルトだ。
これだけの規模の災害が連続しているのに緘口令は徹底されるのか、一瞬にして地軸までズレてしまうほどの変化の中で飛行機は無事に飛べるのか、森林が被害を受け火山は爆発し放題なのに酸素や気温は大丈夫なのか、などなど突っ込みたくなる部分はゴロゴロ。
ま、ご丁寧に「科学は無力」なんていうセリフを用意しているくらいだから、ハナっからサイエンスは無視するつもりだったんだろう。「滅亡しそうです」「そうなのかっ」と力ずくで押していく感じ。
科学考証以外にも、粗さの目立つストーリー。ファースト・パニックまで50分もかけるのはタルいし、そのパニックも基本的には地割れや火山灰から逃げるという追っかけっこに終始してバリエーション不足。
地殻変動と津波以外にも、オゾンの破壊とか動物の行動とか、いろいろと盛り込めるものはあっただろうに。カーティス家とヘルムズリー博士の2軸だけじゃなく、もっと多彩に「刻々と、あるいは突然迫り来る異変と、その周囲の人々」を描けたんじゃないか。
惨事を前にしての人の諍いとか、緊急時にルール・手続きを遵守するかどうかといった「人類のありかた」的な要素も採り入れているけれど、それがテーマに結び付くことはない。船の故障の原因となったジャクソンたちがちゃんと「俺たちのせい」と認識するのはエライ(ハリウッド娯楽作だと、このへん無視してひたすら助かろうとするのが常道)ものの、それを無理やり感動へと引っ張っていくクライマックスも疑問。だって、人類あらかた死んどるやんっ。
そもそも偶然の積み重ねでほぼすべての出来事が進行するという強引すぎるお話。相変わらず「風呂敷を広げるだけ広げるけれど、ディテールと畳みかたについてはお構いなし」のエメリッヒ流である。
ただ、ディザスター・ムービーとしての見た目的な仕上がりは上々。ややアンダー気味の画質は「人類の最期」を感じさせ、舞台を大きく捉えてスケール感もたっぷり。VFXもさすがのド迫力。サウンドもヒュンヒュンと派手に響いてスリルを高める。
火山弾がキャンピング・カーを壊し、豪華客船をアッサリと沈め、津波はいきなりやって来て、船のピンチは親子でたやすく解決するという展開は、『ボルケーノ』や『タイタニック』や『ディープ・インパクト』や『ポセイドン・アドベンチャー』の寄せ集めでありつつ、「このへんはね、もう現代の作劇セオリーや特殊効果では見せ場ってほどじゃないんですよ。だからサラリと済ませますよ」的なニュアンスも感じられて、その余裕みたいなものは微笑ましくって意外と好きだ。
そんなわけで、内容としては浅いけれど、そこそこには楽しめるデキ。
でも、中国人がやっつけ仕事で造った船に10億ユーロも出して乗りたくないなぁ。それだけの金があれば自力でいろいろとできそうだし。
●主なスタッフ
撮影監督は『アポカリプト』などのディーン・セムラー。VFXのフォルカー・エンゲル、マーク・ウェイガート、マイク・ヴェジーナは『ID4』や『X-MEN:ファイナル ディシジョン』などに関わった面々。サウンドは『ハート・ロッカー』のポール・N・J・オットソンら。
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