チャイルド・プレイ
監督:トム・ホランド
出演:キャサリン・ヒックス/クリス・サランドン/アレックス・ヴィンセント/ブラッド・ドゥーリフ/ディナ・マノフ/ジャック・コーヴィン/ニール・ギュントリ/トミー・スワードロー
30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4
【人形に乗り移った殺人犯】
刑事マイク・ノリスによってトイ・ショップに追い詰められた連続絞殺魔チャールズ・リー・レイ。彼は絶命寸前、子ども向け人気TV番組『グッド・ガイ・ショー』のキャラクター人形に自分の魂を移し替えた。その人形を6歳の誕生日プレゼントとして手にしたのは、シングルマザーのカレンと暮らすアンディ。“チャッキー”と名乗る人形はアンディと仲良くなり、密かに、自分を裏切った仲間エディやノリス刑事への復讐を企むのだった。
(1988年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【B級ホラーの鑑】
どう割ってもB級なんである。画面は古くて野暮ったいしレンズの種類も少ないし、おもちゃ屋と隠れ家は派手に爆破するけれど「頑張りました」感がアリアリだし、音楽もチープだし。
息子がピンチだからっていきなり自分でナントカしようとするママの行動とか、突然のカー・クラッシュとか、ストーリーもちょっとムリ目。ラストカットなんか、オモワセブリックすぎてモヤモヤが残るだけ。
でも面白い。予算900万ドルの何倍も全世界で稼ぎ出し、続編が何本も作られ、いまなおたまにTVでも放送される事実が「面白い」の証拠だ。
まずはアンディの愛らしさと頼りなさと健気さを印象づける。グッド・ガイとおそろいの服、少しばかりのおもちゃ。忙しくって貧しいなりに、ママはきちんと子育てをしているようだ。後半には「天国のパパ」みたいなセリフもあって、そのあたりもこの母子への感情移入を誘う。アレックス・ヴィンセント君自身の可愛らしさもグッドだ。
ところがママの親友マギーは、チャッキーをぞんざいに扱って観る者をヒヤヒヤとさせる。案の定、彼女には天罰(?)が下る。でもチャッキーは正体をなかなか現さず、チラっと見せる後ろ姿にゾクリ。カッティングも上手い。チャッキー視点の一人称ロー・アングルも利いている。
全体に、ビクっとさせるショッカー演出よりもゾワゾワと沸き上がるスリルを重視した見せかた。母子にジワリと迫る危機。とりわけ「チャッキーに電池が入っていない」シーンはママ役キャサリン・ヒックスの「まさかと思うけれど、そんなはずないわよね」顔ともあいまって、大好きな場面だ。
チャッキーの造形も素晴らしい(デザインは『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』や『イーオン・フラックス』などのスペシャル・メイクアップ・アーティストのケヴィン・イェーガー)。メカトロニクスとマペットとスタントを使い分けて創出する、ひょこひょこ歩いて睨みつけるチャッキーの“うすら怖さ”が上質だ。
トム・ホランドはこの後たいしたフィルムを残しておらず、本作は奇跡的な出来栄えとも思えるのだけれど、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』の中の1本「キス・ミー」も軽快なテンポで見せる極上のコミカル・ホラーだったので、実力はあるはず。
まぁ間違っても歴史に残る作品ではないし、広がりも深みもないただのB級ホラーなんだけれど、ツボを押さえてキュっと締まっていて「怖いということの面白さ」を感じさせてくれて、10年に1回くらい観たくなる(実際に観ているし)、B級の鑑的な映画である。
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