ニュームーン/トワイライト・サーガ
監督:クリス・ワイツ
出演:別掲
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸3/技4
【別離の苦しみ、再会の苦しみ】
不老不死の吸血鬼エドワードと愛し合うようになったベラ。だが18歳の誕生日を迎え、自分だけが年老いていく恐怖を感じ始める。さらに「君は必要ない」という言葉を残し、遠くへ去るエドワード。ベラの哀しみを癒してくれたのは、幼馴染の先住民ジェイコブだった。そこへ、ベラとエドワードに恨みを持つヴィクトリアが迫り、森では人が獣に襲われる事件が多発、ジェイコブはある秘密を抱え……。人と吸血鬼と人狼の、愛の戦いが始まる。
(2009年 アメリカ)
【停滞と暑苦しさ】
監督は『ライラの冒険 黄金の羅針盤』のクリス・ワイツへとバトン・タッチ。さぞかしテンポアップ&バトル増量かと思いきや、まったくの逆。
なんとまぁ展開が遅いこと。
実をいえば、このスローな流れ、そう悪くはないと思う。
くもり空をベースに、全体にアンダーな色調で前作と同様の暗くて物悲しい雰囲気をキープ。そこへ、一気の時間経過、空いたテーブル、枯れた野原などで「彼のいない世界」というブルーな気分も上手くプラスする。
カッコよく決まっているカットも多く、行き当たりばったりではなくあらかじめ「こう撮りたい」と考えて作っている気配もある。
何より、前作で不満だった「自分だけが年を取ることの哀しさ」をクローズアップし、多少なりとも“切なさ”を創出した点は買える。
が、いかんせんタルすぎる。最初の1時間はほとんど何も起こらず、ただウンウンと哀しみ唸っているベラの様子を見せられるだけ。
ベラ=クリステンの目力のおかげで個人的には「まぁコレもいいか」と思えるが、メインターゲットであるティーンはとうてい納得しないでしょ。ラジー賞では最悪続編部門/最悪カップル/最悪シナリオなどにノミネートされ、IMDbのvoteでも4.6点(2010年7月の時点)と評価を落としたのもうなずける。
それに前作では好感を持てたキャストたちにも、「やっぱり違うんだよなぁ」という思いが沸き上がってくる。
クリステン・スチュワートは前述の通り、シャープで悲恋で眉を寄せながら突っ走っていていいんだけれど、あとのふたりが、どうも。
エドワードのロバート・パティンソンは、栄養失調の劇団ひとりか、やさぐれた田原俊彦に見えて困る。懸命に白くしているけれど、このキャラクターに持っていて欲しい“はかなさ”に欠ける。
ジェイコブのテイラー・ロートナーは、堤下かジャイアンか。髪を切ってからは多少マシになったものの、野暮ったくて魅力がない。
前作ではさまざまな人物にバランスよく“機会”が与えられていて、それが「子どもっぽいクラスメイトの中で居心地の悪さを感じるベラが、謎めいた一団に惹かれていく」という空気と流れを生み、トータルとして“いい感じ”になっていた。
今作でも、ジェイコブの仲間たち、カレン家、クラスメイト、ヴォルトゥーリの一族など、主要3人以外が絡んでくる場面は結構面白い。とりわけヴォルトゥーリにはビッグネームがズラリ、さすがに画面が締まる。
けれど全体としては3人に寄り過ぎる内容、ロバート・パティンソンとテイラー・ロートナーの暑苦しさが目立つばかりだ。
それでも、もうあからさまに“女子にとっての萌え要素”が盛り込まれてあって、そういう部分での魅力を感じ取ることはできる。
きっと王子様が助けに来てくれるという幻想を抱きながら、ふたりの男を天秤にかけ、「私のために戦わないでっ!」という憧れの言葉を吐き、自分が“この世界で特別な存在”なのだという事実に酔う……。
アナ・ケンドリックのジェシカは『ゾンビ』と比較して「普通の女の子はイケメンとのロマンスが好き」と語るわけだけれど、それ以上の萌えシチュエーションが、確かにベラの周囲にはある。
まぁ傍から見ればベラって身勝手このうえない存在なのだが。
さて、恐らく次回作は、カレン家、ヴォルトゥーリ族(マイケル・シーンってば『アンダーワールド』ではライカンとして吸血鬼と戦っているのに、大忙しだな)、人狼、ヴィクトリアという卍巴の戦いになるのだろうが、各種の萌え要素をどう広げるのか、やや停滞気味だったストーリー展開をどうテンポアップしていくのか、気になるっちゃあ気になる。
でも、暑苦しさとタルさのせいで、もはや観続けるモチベーションは萎えてしまっているのである。
■出演■
●スワン家
クリステン・スチュワート(ベラ)/ビリー・バーク(チャーリー)
●カレン家
ロバート・パティンソン(エドワード)/アシュリー・グリーン(アリス)/ジャクソン・ラスボーン(ジャスパー)/ピーター・ファシネリ(カーライル)/エリザベス・リーサー(エズミ)/ケラン・ラッツ(エメット)/ニッキー・リード(ロザリー)
●先住民
テイラー・ロートナー(ジェイコブ)/チャスク・スペンサー(サム)/ギル・バーミンガム(ビリー)/グラハム・グリーン(ハリー)/タイソン・ハウスマン(クイル)/キオワ・ゴードン(エンブリー)/アレックス・メラズ(ポール)/ブロンソン・ペルティエ(ジャレッド)
●クラスメイト
アナ・ケンドリック(ジェシカ)/マイケル・ウェルチ(マイク)/ジャスティン・チョン(エリック)/クリスチャン・セラトス(アンジェラ)
●その他のヴァンパイア
マイケル・シーン(アロ・ヴォルトゥーリ)/ダコタ・ファニング(ジェーン)/ジェイミー・キャンベル・バウアー(カイウス)/クリストファー・ハイアーダール(マーカス)/レイチェル・レフィブレ(ヴィクトリア)/エディ・ガテギ(ローラン)/キャメロン・ブライト(アレック)
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