サロゲート
監督:ジョナサン・モストウ
出演:ブルース・ウィリス/ラダ・ミッチェル/ロザムンド・パイク/ボリス・コジョー/ジェームズ・フランシス・ギンティ/ジャック・ノーズワーシー/デヴィン・ラトレイ/マイケル・カドリッツ/ジェフリー・デ・セラーノ/ヴィング・レイムス/ジェームズ・クロムウェル
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3
【ロボットが約束したはずの平和な未来】
脳波で遠隔操作する精巧なロボット=サロゲートが普及し、家から出ることなく安全に社会生活を送れるようになった近未来。だがサロゲートの回路が焼き切られ、その主人も操作システムの中で死亡するという事件が発生。FBIのトム・グリアーとジェニファー・ピータース(もちろんふたりもサロゲートだ)は殺人に使用された謎の兵器を追うが、事件の裏にはサロゲートの大手メーカー・VSI社を巡る陰謀が隠されていた。
(2009年 アメリカ)
【一歩先、1つ上に進む力の欠如】
監督・脚本は『ターミネーター3』のチーム。そのぶん期待せずに観たのが良かったのだろう、考えていたよりは面白い映画だった。ただし相変わらずSFマインドという点で不満の残るデキ。
流れはスムーズ。冒頭で一気に時代背景を説明するのは(安直とはいえ)当然の策だし、その後のテンポも上々だ。
トムが生身で動くシーンでは画面をナナメにうつすカットを多用して不安を増大させるなど、撮りかたも手堅い。
サロゲートによる事件や感染の減少およびサロゲートがイケメン&美女揃いという設定、サロゲート操作マシンやサロゲート・ホルダーのデザイン、街角充電器やレンタル品・安売り品の存在など、ディテールのふくらましもマズマズ。プロダクションデザインは『トランスフォーマー』などのジェフ・マン、コンセプト・デザイナーは『ヘルボーイ』や『アバター』などのティルベン・エリングソンで、世界の作りかたは及第点。
また、出演者やメイキャップ、VFXの頑張りで、肌の質感、瞬きのタイミング、視線の送りかた、歩様などが微妙に人間とは異なる“サロゲートらしさ”も醸し出されている。
と、最低限の仕事は感じられるのだけれど、そこから先の一歩がない。
数年でサロゲートが普及したことによる社会的な影響、テクノロジーに関する描写、経済の実際……など、より世界観に厚みをもたらす要素が省略されていて、現実味に乏しい。
クライマックスの処理もマズく、タイムリミット・サスペンスのスリルが十分に出ていないし、『フラッシュフォワード』のようにもっと大きな事故が発生して然るべきだろう。
軍の要職にいる人間が重大な事項を簡単に喋りすぎたり、身近に裏切り者が潜んでいたり、人類を救う決め手が都合よく用意されていたり、単純・強引にストーリーを進める気配も強い。
予言者が果たす役割やアンチ・サロゲート派の暮らしぶり、サロゲートの開発者・キャンター博士が抱く思い、息子の死という哀しい過去に苛まれるトムとサロゲート社会との関係といった「人の心」に関わる部分の描写も、はっきりいって下手。
要するに薄味。尺を短くするとともにサントラを常に響かせることで、無理やり濃度を上げようとしたイメージが残る。
アイディアとしては面白いし、決してダメダメでツマラない映画というわけでもないのだが、そのアイディアを1つ上のステージへ引き上げるためのSFマインドやストーリー構成力、演出力という点で良作になれなかった映画、といったところである。
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