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2012/08/26

おおかみこどもの雨と雪

監督:細田守
声の出演:宮崎あおい/大沢たかお/黒木華/西井幸人/大野百花/加部亜門/中村正/大木民夫/片岡富枝/平岡拓真/林原めぐみ/染谷将太/谷村美月/麻生久美子/菅原文太

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸4/技3

【この子たちと暮らしていく】
 大学生の花が恋に落ちた相手は、おおかみおとこ。ふたりの間には、長女の雪、長男の雨が生まれたものの、雪も雨も人間でありながら狼でもあるという子どもたちだった。やがて花は、女手ひとつでこの子たちを育てていかなければならなくなってしまう。誰にも迷惑をかけぬよう、家族の秘密を他人に知られぬよう、田舎暮らしを始めた花たち。雪も雨も人前では狼の姿にならないと誓い、人として、人の社会で生きていこうとするのだが……。
(2012年 日本 アニメ)

★ややネタバレを含みます★

【さまざまな顔を持つ「映画」である】
 秘密を共有する。愛する人の一大事に桃缶を持って駆けつける(単にそのアタフタっぷりと、「妊婦には桃だ」という価値観と、恐らくは“命の連続性”の象徴として桃が機能している点と、すべてが個人的にはツボ)。
 ふたりがひとつになった夜も、残酷で無機的な別れも、ちゃんと描いてみせる。大いなる神秘を受け入れる幼い決意も見せる。
 これはもう恋愛映画なんである。

 誰も孤立して生きてはいけないことを示す。周囲に助けられながら社会に溶け込むという「人の生きかた」や、近所づきあいのあるある、ガラガラのバスで「席、取っといてあげたよ」という無邪気さ、自然の中で生きるためのルール、教わり学ぶことの大切さなども盛り込む。
 いってみれば、生活映画である。

 子どもが人間であろうが狼であろうが、子育ての大変さに変わりはないことが示される。狼であることを満喫していた雪、狼であることを否定していた雨が、やがては正反対の道を歩むことになる“健やかな理不尽”。
 序盤は見守るような俯瞰気味のアングルを多用し、終盤では、かつて抱きかかえていた子に抱きかかえられる姿や、親に追いつき追い越す身長、そして自立、子を見上げる視点へとつなげていく。
 子育て映画である。

 侮れないほどの要素が詰め込まれ、さまざまな顔を見せる、この作品。
 だが逆にいえば、焦点が定まっていないとも取れる。雪のナレーションベースで進む割には雪の回顧録ではないわけだし。

 また現実問題としての「狼の子を育てる」ことの難しさに関する部分は意外と浅く(夜鳴きと、うっかり変身してしまわないよう気をつけることくらいで、花が思い悩んでいることの具体的事例には乏しい)、前述の通り「子育て全般にかかわるもろもろ」という普遍性へと舵を切る。雨の自立だって形のうえでは狼ならではのものだけれど、男の子は誰だって巣立っていくものだろう。トータルでいえば「おおかみを絡めなければならない内容」ではなかったようにも思える。
 シングルマザーの大変さに関する描写も、薄味といえば薄味だ。

 ただここでは「ファンタジーと現実に垣根などない」、「考えてみれば男(父親)なんてみんな、女(子ども)にとってはフラフラ身勝手で謎めいていて、狼みたいなもんだ」、「どのような境遇であれ、そこでは家族だけの物語が紡がれる」、「家族の物語、あるいは恋愛や絆は、それぞれ独自ではあるものの他者との共通点もあり、シンパシーを感じることもできる」……といったことを提示するための設定・展開だとして、好意的に捉えたい。

 それに、確かなことがある。

 まず世界・空間を創出し、その中に人物を配置して動かすという細田監督の絵作りは、今回ますます磨きがかかった感じ。加えて、実写由来の風景やCGを上手に手書きのセル画と融合させて、まさに「ファンタジーと現実に垣根などない」ことを見た目的にも具現化してみせる。
 ゆっくりと明けていく空の美しさ、雪山を駆ける疾走感。クルリと回ってくれば(あるいはフレームアウト~インで)雪が狼になっている、その変身の様子もすこぶる楽しいし、明らかに『トトロ』へのオマージュと取れるシーンでは「ナナメってる~!」がむちゃくちゃ可愛い。
 つまりは、アニメーションなのである。

 懸命さも浅はかさも内包する宮崎あおい、弱さと優しさを併せ持つ大沢たかお、くっきりとした黒木華、弾ける大野百花と、それぞれ声質が映像にマッチしていて、お芝居も立派。
 カーテンがなびき、そこで変わらずにいる雪の姿に、彼女の「これから」への決意が読み取れる。子どもたちを見送る花の笑顔、けれどその裏には寂しさがあることを観る者は想像する。そうした“読解”に直面する作り。
 すなわちこれは、映画なんである。

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