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2012/08/22

ダークナイト ライジング

監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル/ゲイリー・オールドマン/トム・ハーディ/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/アン・ハサウェイ/マリオン・コティヤール/マシュー・モディーン/アロン・アブトゥブール/ベン・メンデルソーン/バーン・ゴーマン/ネスター・カーボネル/ジュノー・テンプル/トム・コンティ/ウーリ・ガヴリエル/ジョーイ・キング/キリアン・マーフィ/リーアム・ニーソン/マイケル・ケイン/モーガン・フリーマン

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3

【失意を超えて新たな戦いが始まる】
 真実までをも犠牲にしてゴッサム・シティに平和がもたらされてから、8年がたった。傷ついたバットマン=ブルース・ウェインは隠遁生活を送り、ゴードン市警本部長はバットマンを「悪」に仕立てた自分を責め続ける。投資家ミランダや女盗賊セリーナ・カイルらがブルースに近づく頃、科学者を拉致したマスクの傭兵ベインがシティで暗躍を始める。会社を追われるブルース、ベインに敗れるバットマン。これまでにない窮地が訪れる。
(2012年 アメリカ/イギリス)

【土台のフワフワ感がちょっといただけない】
 一貫して“正義と悪の曖昧な境界線”や“光と影が表裏一体となった人の心”を描いてきた、このシリーズ。今回も冒頭のシーンで「逃げるCIAの乗る飛行機は黒、追う悪党の飛行機は白」という倒錯的な色づかいで、そのイメージをいきなり提示する。
 そのアクションも凄まじくって、傑作の予感。

 が、どうもフワっフワっとしたまま進むのが気に食わず、迫力あるシーンを畳みかけられてもノっていけない状態が続く。

 まぁ「前作までを観ていないとわからない部分が多いよ」というのは仕方ないとしても、立ち位置とか行動の動機が曖昧なままストーリーに関わってくる人物が多すぎないか? ちょっと整理してみると

 なんか地下でやっているらしいベインの真の狙い
 よくわからん新エネルギー計画に興味のある謎の投資家ミランダ
 会社をどうにかしたいらしいダゲット
 どうやら保身を第一に考えているみたいなフォーリー副部長
 あちこちから追い詰められながら不思議と余裕なセリーナ・カイル

 このあたりが宙ぶらりんのまま並行してストーリーが進んでいく。
 個々人の心の中だけではない。デント法がゴッサムにもたらした「平和にはなったが疑心暗鬼もはびこった世の中」という雰囲気も、後半の暴動のキーとなる「富の再配分が十分におこなわれていないことへの不満」も、展開を考えればしっかりと描かれるべきだったはずだし、事実そういうものに直面しているアメリカの世相を考えても手は抜けなかったはず。
 なのに、スルーしてしまう。

 たぶん、ベインの狙いは何なのかと奮闘するブルースや若き熱血警官ジョン・ブレイクらの様子がピタっと縦軸に据えられて、そこにモロモロの要素が順次絡まってくるような展開なら問題なかったのだろう。
 が、全体に散文的というか、あまりに多くの謎を残したままお話を進めようとして、あげくの果てに「これこれこうでした」とセリフで説明してしまうもんだから、気持ち悪くってしょうがない。

 個別のシークエンスでも編集の粗さを感じた。つまりは脚本そのものというより、ポストプロダクション時における「いろいろなエピソードの整理の仕方」がマズかったのかも知れない。
 ラストも、執事アルフレッドの笑顔だけで終わっていたほうがよっぽどオシャレなんだよなぁ。

 結果として、ただ雑然とした「復讐と悔恨とちょっぴりの希望の物語」に成り下がってしまったイメージ。それが残念。
 でも、見終えて脳内補完・脳内整理すれば、まあまあ納得できるストーリーではあるだろうけれど。

 シーン1つ1つとか世界観は、さすがの仕上がり。
 アクションやファイトはスピーディでオリジナリティもあり、もう1回観てみたいなと思わせるだけの濃密さがある。街角、証券取引所の中、荒んだ通り、脱出不可能な地下牢獄など、色合いの異なる場所すべてが“バットマンの世界”としてちゃんと収まるのも不思議だ。
 空飛ぶバットや前後輪がクルクルっと回るバット・ポッドのデザインと挙動は身震いするくらい素晴らしい。
 要するに、ノーラン版バットマンとしての見た目の仕上がりは及第点。3時間近い長尺でも(上記のモヤモヤを別にすれば)、無駄なシーンはないし密度は高いしキャラクターそれぞれに見せ場はあるしで、決してダレることはない。

 役者では、ベインを演じたトム・ハーディのたたずまいが良。見た目的にはバカ怪力キャラなんだけれど、そこに知性や信念を上手く乗っけている。それって結構難しいはずだよなぁ。
 ああもちろん、アン・ハサウェイはね、今回もすこぶるキュートですよ。身体もびっくりするくらいよく動いてるし。もうちょっと猫耳が大きければいうことなし。うちに来て何か盗んでくれよ。

 そんなわけで、ちょっと土台の甘い地べたの上に、かなり豪華で質感もいい建物をデーンと建てたような映画、という感じである。

●主なスタッフ
 主要なスタッフはほとんどが前作『ダートナイト』と共通している。
 脚本は監督自身と『プレステージ』のジョナサン・ノーラン。撮影は『インセプション』のウォーリー・フィスター、編集は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のリー・スミス。
 プロダクションデザインは『パブリック・エネミーズ』のネイサン・クロウリーと『ローラーガールズ・ダイアリー』のケヴィン・カヴァナー。衣装デザインは『カジノ・ロワイヤル』のリンディ・ヘミング、音楽は『シャーロック・ホームズ』などのハンス・ジマー、サウンドは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのリチャード・キング。
 SFXは『慰めの報酬』のクリス・コーボールド、VFXは『謎のプリンス』のポール・J・フランクリン、スタントは『タイタンの戦い』のバスター・リーヴス。

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