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2012/08/28

恋するベーカリー

監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:メリル・ストリープ/アレック・ボールドウィン/スティーヴ・マーティン/レイク・ベル/ジョン・クラシンスキー/ケイトリン・フィッツジェラルド/ハンター・パリッシュ/ゾーイ・カザン/メアリー・ケイ・プレイス/リタ・ウィルソン/アレクサンドラ・ウェントワース/ロバート・カーティス・ブラウン/エムジェイ・アンソニー

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸4/技3

【恋の相手は別れた夫? 新しい出会い?】
 長女のローレンは結婚を控え、長男ルークは大学を卒業、末娘のギャビーはひとり暮らしを始める。子育てを終えて少し寂しい思いを味わっていたベーカリー・ショップの経営者ジェーンは、別れた夫ジェイクと“不倫”の関係に。ジェイクは25歳も年下の妻アグネスとの仲が上手くいっていないらしい。いっぽうジェーンの家の増築を担当することになった設計士アダムはジェーンに好意を寄せるようになる。複雑な恋の三角関係が行く先は?
(2009年 アメリカ)

【笑えるけれど、詰めが物足りない】
 ナンシー・マイヤーズ監督らしい、ちょっとエッチで切なさもある大人のラブコメディ。監督自身、『赤ちゃんはトップレディがお好き』や『花嫁のパパ』をいっしょに作ったチャールズ・シャイアとの離婚歴があるらしいので、経験や想いが反映されているのかも知れない。
 いや、それにしては『恋愛適齢期』『ホリデイ』といった過去作より馬鹿笑いしたかも。

 でも、笑いの中に「夫婦関係とは何か?」とか「自由恋愛とは何か?」といったテーマ性、あるいは「人は迷う生き物だから、結婚し、離婚し、恋をし、思い悩む」なんていうメッセージを含ませてあるのは確か。
 ブランコは「行ったり来たりしながら、どこへも進まず、結局は同じことを繰り返すだけ」というジェーンとジェイクの関係を隠喩するものだろう。チョコクロワッサンは「中に隠された甘さ」の喩えだろうか。

 そんな要素を入れ込みながら、積み木を組み立てるように出来事を重ね、流れるようにお話は進む。ジェーンとジェイクの出会いやハーレイがふたりの逢瀬を目撃するあたりを偶然に頼った展開にするなど都合のよさも目につくものの、テンポは良質。音楽は軽快、衣装や美術も楽しく、全体に手堅く作られているイメージだ。

 ただ、ジェイクとの関係に比べてアダムとの恋は掘り下げ不足の印象も。たがいに惹かれあう描写がもっとあってもよかったはず(編集段階でカットされたような気がする)。そのバランスの悪さのおかげで、ジェイクに対するジェーンの複雑な想いや、彼女がいま何を(誰を)いちばん大切と考えているのか(作中に何度も『優先順位』というセリフが出てくる)が曖昧になり、せっかくのテーマやメッセージが薄れて、モヤモヤする結末になってしまっている。

 極端にいえば「元夫との恋の再燃ドタバタ劇」に終始し、「恋とか夫婦って本当はそういうものなんだよねぇ」というカタルシスを得られずに終わるのだ。

 そういう“不足”を補うのが役者たち。メリル・ストリープは「余計なことはいわなくていいのに」という気持ちを顔のこわばりだけで表現し、アレック・ボールドウィンも複雑な立場に置かれた男の哀しさを好演。
 ジョン・クラシンスキーは純コメディ演技を無理なく作品の中に収め、ケイトリン・フィッツジェラルド、ハンター・パリッシュ、ゾーイ・カザン、3人の子どもたちも健やかで美形で、映画に華を与える。
 だからこそ余計に見せ場の少ないスティーヴ・マーティンが「この役なら他の人でもよかったのにな」と感じられて、もったいない。

 個々のシーンは大いに笑えるし、それなりに考えさせる要素も詰まっているけれど、まとめかたのツメが甘い仕上がりで損をしている作品だ。

●主なスタッフ
 音楽は『インセプション』のハンス・ジマーと『ヘイヴン 堕ちた楽園』のヘイター・ペレイラ。音楽スーパーバイザーは『ダレン・シャン』『パブリック・エネミーズ』『ぼくたちの奉仕活動』のケイシー・ネルソン。
 衣装は『トーク・トゥ・ハー』や『アザーズ』のソニア・グランデ、プロダクション・デザインは『リバー・ランズ・スルー・イット』『きみがぼくを見つけた日』のジョン・ハットマン。

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