バレンタインデー
監督:ゲイリー・マーシャル
出演:別掲
30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3
【バレンタインデーに生まれる恋、破れる恋】
花屋のリードと恋人のモーリー、教師のジュリアと医師のハリソン、リズとジェイソンのカップル、エドガーとエステルの老夫婦に孫のエディソン、高校生のアレックス&グレイスとウィリー&フェリシア、フットポーラーのショーンと広報担当カーラとエージェントのポーラ、飛行機で隣りあわせになったホールデンとケイト、スポーツリポーターのケルビンと上司のスーザン……。バレンタインデーのLA、彼らと彼女らの慌しい1日は続く。
(2010年 アメリカ)
★ネタバレを含みます★
【意外と楽しい】
オスカー級が何人も揃って“オールスター”といえるキャスト。でも得てしてこういうのって「顔ぶれだけは豪華だけれど……」になりがちなのは学習済みだ。賞関係の記録を観るとラジー賞とかティーン・チョイス・アワードとか。さすがにソコソコは稼いだようだけれど、IMDbの評価はすこぶる低い。
明らかに柳の下の『ラブ・アクチュアリー』を狙った構成だし、監督も日本では二番煎じの大家みたいに捉えられているゲイリー・マーシャル、原案に名を連ねるのは『25年目のキス』や『そんな彼なら捨てちゃえば?』といったベタなラブコメを作った人たちだ。もうハズレ臭ぷんぷんのプロフィールじゃないか。
でも、意外と楽しい。
いや実際のところ、二番煎じだしデートムービー以上でも以下でもないんだけれど、その範囲内でテンポは上々、陽気な音楽と多彩なロケーションを楽しめて、各人物・各背景にしっくりと溶け込むような衣装も良質、ニヤリと笑えたりしんみりと泣けたりする空気だって作り出されている。
小道具の使いかたも上手くて、ペーパーバックを読みながら待つ相棒、噴水で示される“浮かれ”、踏みつけられる電報、突きつけられるハートのオモチャ、そしてもちろん花束などが、ストーリーの流れを助けたりアクセントを生んだりしている。
キャストは、豪華なだけでなく美女揃い。アン・ハサウェイを筆頭に、ジェシカ・アルバ、ジェニファー・ガーナー、ジェシカ・ビール、テイラー・スウィフト、みぃんな可愛い。
これらイマドキの面々の周囲に、シャーリー・マクレーン、ジュリア・ロバーツ、キャシー・ベイツ、クイーン・ラティファといった“ザ・貫禄”を配したのも、いい重石として効いている。
対する男性陣はハッキリいって印象が薄いのだが、唯一アシュトン・カッチャーは、ウキウキと懸命さを等身大に表現していて、本作の中心的な役割をまっとうしている。
子役たちも『フラッシュフォワード』のブライス・ロビンソン、『ベッドタイム・ストーリー』のジョナサン・モーガン・ハイト、売れっ子のブルックリン・プルーと、なにげに豪華だ。
で、けっこう“キテ”るのがセリフの数々。
「愛は地球最後のカンフル剤」
「愛は仕組めない」
「真実を知ったことで、いままでのすべてが嘘に思える」
「恋は踏み込むものじゃない。落ちるものだ」
「愛とは、相手を丸ごと愛すること」
まぁ無理やりねじ込んだ感は否めないものの、ドキっとさせられることは確か。中でも「階段が最高に華やいでいる」っていうのがオシャレ。これ、応用範囲は広そうだ。女の子がソファに座っていたら「世界一ゴージャスなイスを見つけた」といってみたり、浜辺にいたら「今日のビーチは、やけに明るい」とか。
でも実は、空港のセキュリティが「裸足のままで逃げるなんて。床には危ないものだって落ちているのよ」というセリフが、本作のツボ。そういうちょっとした気遣いというか、いまおこなわれていることとの本質とは離れたところにある別の真理のようなものが、社会を、男と女の関係を回しているんじゃないだろうか。
それと、結局のところ男はバカ、女に振り回される存在、というのもメインテーマ。振り回されることに喜びを感じながら、バカでベタな恋愛や格言に踊らされながら、好きな相手を想ってドタバタと突っ走る。そういう男の役割を実感させられる映画ともいえるだろう。
●主なスタッフ
プロダクションデザインは『バックドラフト』のアルバート・ブレナー、衣装デザインは『ラブ・ダイアリーズ』や『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』のゲイリー・ジョーンズ。
音楽は『シン・シティ』や『パッション』のジョン・デブニー、音楽スーパーバイザーは『ジャンパー』や『Mr.&Mrs.スミス』のジュリアン・ジョーダン。
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