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2012/10/17

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々

監督:クリス・コロンバス
出演:ローガン・ラーマン/ブランドン・T・ジャクソン/アレクサンドラ・ダダリオ/ジェイク・アベル/ショーン・ビーン/ピアース・ブロスナン/スティーヴ・クーガン/ロザリオ・ドーソン/メリーナ・カナカレデス/キャサリン・キーナー/ケヴィン・マクキッド/ジョー・パントリアーノ/ユマ・サーマン/ジュリアン・リッチングス/ボニータ・フレデリシー/マリア・オルセン

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4

【神々の子ら、宿命の戦いに挑む】
 天上界最大の武器、最高神ゼウスの稲妻が何者かに盗まれた。海神ポセイドンの息子の仕業であると考えたゼウスと、稲妻を横取りしようとする冥界の王ハデスは追跡の手を人間界へと伸ばす。いっぽう自分がポセイドンと人間との間に生まれた“デミゴッド”だと知った高校生パーシー・ジャクソンは、ハデスにさらわれた母を救うため、守護者グローバーと、同じくデミゴッドであるアナベスとともに危険な旅を続けるのだった。
(2010年 アメリカ/カナダ)

【真っ向勝負にアメリカ風味をつけて】
 少年少女向けのファンタジー映画はハッキリと『ハリポタ』以前と以後に分けられると思うんだけれど、ぶっちゃけ「以後」の成功率ってどうなんだろう。
 まぁ『エラゴン』とか『ライラの冒険』『ダレン・シャン』あたりは討ち死に。この路線で一定の成功を収めているのは『ナルニア』くらいか。
 たとえば『チャーリーとチョコレート工場』『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』、あるいは『テラビシアにかける橋』『かいじゅうたちのいるところ』みたいに、出発点や目指す場所や立ち位置の違う映画なら怪作・快作になっているものもある、というイメージ。

 要は「より低年齢層にもわかるよう噛み砕くか、逆に大人が悪夢にうなされるような作りにするか、そうしないともう、この井戸から水は出ません」といった感じなのかも知れない。
 パイオニアとしてこの流れの中心にドンと座り、ローティーンから大人までを長年に渡って虜にしている『ハリポタ』が、いかに大きい存在であるかがわかる昨今。

 で、本家『ハリポタ』の旗振り役だったクリス・コロンバスが、同じ土俵で戦おうとしちゃったのが本作。いやはや、ここまで焼き直し要素にあふれているとは。
 不幸な境遇で育つ変わり者が主人公、彼を支えるのはお調子者の相棒と、自分は「デキる」と考えているヒロイン。学校では厳しくも頼りになる先生に見守られ、自らの生い立ちにまつわる運命的な戦いに巻き込まれ、無鉄砲な活躍で問題解決。まんまじゃん。
 このフォーマットこそがヒットへの近道、なんていう信念を原作者も映画製作スタッフも抱いていたんだろうか。

 また主人公は多動性障害と難読症(いずれもデミゴッドの特徴)を抱え、継父は横暴。グローバーは杖をつき、アナベスは母を知らない。思えば『ハリポタ』の3人組も、決して家庭環境や性格は健やかじゃないよね。
 何がしかのハンディキャップとか家庭の事情とかを背負っている子(読者や観客)に夢と勇気を与える、という機能がファンタジーにあるとすれば、本作もその役割を担う覚悟は持つとはいえるようだ。

 原作では12歳であるパーシーを高校生にするという翻案で『ハリポタ』より上の年齢層を狙っている模様。が、それ以上に目立つのはアメリカ的な味つけだ。
 大陸横断ロード・ムービーに仕立て上げ、天上界への入口はエンパイアステートビル、危機を脱するためのアイテムはiPod。原作がどうなのかは知らないけれど、『ハリポタ』にはあり得ない要素満載。

 ギリシア神話を下敷きにして親しみやすさを付加してあるのだが、そこに“畏れ”のようなものは感じられない。宗主国イギリスで作られた『ハリポタ』には闇や伝説や魔力など「われわれを取り囲む見えない世界」に対するリスペクトが底辺に潜んでいるけれど、この『パーシー・ジャクソン』はけっこう軽いというか、「ネタはネタとして、面白く設定やストーリーに取り込めばいいじゃん」的なノリ。このあたりもアメリカ的といえるんじゃないだろうか。

 そうした設定や様式、世界観をきっちり語って描いて1本の作品に仕上げ切る技には、さすがに長けている印象。
 つかみ、導入部、アクションの連続、コロコロと変わる舞台、敵役などキャラクターも多彩で飽きさせない流れを作っているし、それらを実現するための撮影や美術、衣装、音楽、VFXなども質は高い(同じギリシア神話を題材とした『タイタンの戦い』と天上界や神々・魔物のデザインを比べてみるのも一興)。
 ハーフ訓練所の規模、戦いの舞台となる博物館や街などが小さすぎずデカすぎず、「高校生の冒険の舞台」として実在感を感じられる点もいい。
 ローガン・ラーマン君(『ナンバー23』『3時10分、決断のとき』に出演)が美少年ってのもポイント高し。ブランドン・T・ジャクソンも芸達者そうだ。

 つまり、単体のパッケージ商品=映画としては、まぁまぁのデキ。真っ向から相手の土俵に上がって、それなりには健闘している。
 でもそれ以上は求めてはいけないというか、前述の通り“畏れ”のようなものがなく重みにも欠けるので「パっと観て、パっと忘れる」ぶんには退屈しない映画、といったところだ(続編も作られているようなので、これから少しずつ重厚感は出て来るのかも知れないが)。

●主なスタッフ
 撮影は『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』『ジュリー&ジュリア』のスティーヴン・ゴールドブラット、美術は『オー!マイ・ゴースト』のハワード・カミングスや『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のサンディ・タナカ。VFXは『スピード・レーサー』『ビッグ・フィッシュ』のケヴィン・マック。
 音楽は『ベガスの恋に勝つルール』『トゥー・フォー・ザ・マネー』のクリストフ・ベック。衣装は『ブラインドネス』『紀元前1万年』のレネー・エイプリル。

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