グリーン・ゾーン
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン/グレッグ・キニア/ブレンダン・グリーソン/エイミー・ライアン/ハリド・アブダラ/イガル・ノール/サイード・ファラジ/ジェイソン・アイザックス/ジェリー・デラ・サーラ/マイケル・オニール
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4
【イラク戦争の裏に隠された秘密】
バグダッド空爆から4か月。大量破壊兵器を発見することができず、ロイ・ミラー准尉は情報源に疑問を抱き始めていた。そんな彼に「次も無駄足になる」とCIAのブラウンが接触してくる。さらにイラク人のフレディから「大物が密会している」との情報を得たミラーは、件の場所で重要手配者アル・ラウィを発見する。その矢先、国防総省情報局のパウンドストーンから横槍が入った。何かがおかしいと感じたミラーは独自に動くのだが……。
(2010年 フランス/アメリカ/スペイン/イギリス)
【プロが作るプロの映画】
戦争(軍人)+謀略のサスペンスには、何よりも“プロフェッショナリズム”が大切なんだとあらためて実感できる仕上がり。
ミラーの隊が置かれている現状と彼の疑問、周囲、情報源マゼラン、国防総省とCIAの対立、事態の裏に潜む秘密などを描いていくわけだが、その流れの上手さや緩急のリズムはもちろん、各人が職業意識と正義感から自然かつスピーディに行動しているイメージがあり、よって説明も最小限にとどめられていて、それが「プロの軍人や政治家が動いている」という雰囲気へと直結している。
要するに「AだからBをする」のAの部分を状況描写の積み重ねと観客の想像に委ね、それでも然るべきタイミングで一応は整理する配慮も見せる、そんなまとめの巧さがあるのだ。
あるいは“プロフェッショナリズム”を「何のためにその行為が必要かを理解して行動すること」だと捉えることもできるだろう。
だから序盤とクライマックスのアクションシーンは「なんかゴチャゴチャっと撃ち合っているけれど目的は1つ」という芯が通っていて意味不明にならないし、逆に「何のためにこんなことをさせられているのか」というミラーの立場と疑問、すべてを帳消しにしてしまうある1市民の行動は、プロフェッショナリズムに対するアイロニーとして機能する。
なかなか面白い構造だ。
作りにも随所からプロフェッショナリズムが感じられる。その場へ飛び込んでいく絵づくり、迫力とリズム感のある編集、舞台、音、特殊効果など、それぞれがリアリティを創出するために適確に仕事をしているような印象。
軽快な娯楽作でありながら“その場のヒリヒリ感”も重視していて、ちょうど『ボーン』シリーズと『ユナイテッド93』をミックスさせた空気となっていて、ここに監督のキャリアが生きているのだろう。
終盤を銃撃に頼ってIQを落とした点がちょっと気になるものの、プロが作ったプロの映画、とはいえそうだ。
●主なスタッフ
脚本は『L.A.コンフィデンシャル』などのブライアン・ヘルゲランド、撮影は『ハート・ロッカー』のバリー・アクロイド、編集は『ミニミニ大作戦』のクリストファー・ラウズ。プロダクションデザインは『アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン』のドミニク・ワトキンス。
音楽は『ハッピーフィート』のジョン・パウエル、サウンドは『カジノ・ロワイヤル』のオリバー・ターニーや『ブラッド・ダイヤモンド』のハビエル・ホラン。衣装デザインは『キンキーブーツ』のサミー・シェルドン。
SFXは『バンク・ジョブ』のジョス・ウィリアムズ、VFXは『スターダスト』のピーター・チャン。
グリーングラス監督とは『ボーン』シリーズや『ユナイテッド93』で組んだ人が多く、それだけに手堅い仕上がり。
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