フェーズ6
監督:アレックス・パストール/ダビ・パストール
出演:ルー・テイラー・プッチ/クリス・パイン/パイパー・ペラーボ/エミリー・ヴァンキャンプ/クリストファー・メローニ/キーナン・シプカ/マーク・モーゼス/ディラン・ケニン/リアニー・リンチ/マリー・ピーターソン
30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4
【ウィルスから逃れて、彼らはどこへ行くのか】
未知の伝染病が急激に蔓延した世界。多くの人類が死滅したのか、それともどこかへ避難し閉じ篭っているのか、町に人影はほとんどない。なんとか生き延びたブライアンとダニーの兄弟は、それぞれのガールフレンド、ボビーとケイトとともに盗んだベンツを走らせる。夏のたびに家族で訪れていた辺鄙な海岸へと向かい、そこに立つ無人のモーテルで事態の収束を待とうというのだ。だが、彼らの行く手には数多くのトラブルが立ちはだかる。
(2009年 アメリカ)
【アンバランスさが心地よい】
青空をターンさせてプロローグから本編へと突入する。あるいはタイトルからクルマのトラブルへと持っていく。伝染病の説明という前段階なく、いきなり本題へ持っていく。その疾走感と強引さが良。
人物とカメラの距離感は近く、けれどそれだけに頼らずフォーカスを細かく操って人を浮かび上がらせて、クルマのキーや写真のアップといったドキリとさせるカットも多い。
シートに残る手の跡という「よくあること」に恐怖の意味を与えたり、最後までラジオで音楽を送り続けることにこだわる人の存在、あるいは終末世界においても父であろうとする男や倫理を重んじるリーダーなど、面白い要素をサラリと盛り込む“味”もある。
そうした鋭角的な作りやアイディアが随所に見られるものの、基本的にはメジャー志向の撮りかたというか、青春ロードムービー的なノリ。
また、ヤケになってバカをしでかしたり、人の無力さと大いなる自然(空や雲の動き)との対比を採り入れたりなど、サバイバルものとして不可欠なファクターもちゃんと見せてくれる。
けれども「愛を貫く」といったヒロイズムや安っぽいアクションなど、ありがちな終末モノへと持っていくのではなく、また必要以上にグロへと走るわけでもない。
見るからに規模の小さな作品。普通なら見せかたのセンスだけで勝負したりショッキングな描写に凝りたくなるところだろう。
でも、確かにセンスやショックを感じさせつつも、生き延びるためのリアリズムや「そうまでして生きることの意味」へと収束させ、破滅型のストーリーを構築してみせる。
派手なサバイバル・ムービーを期待すると肩透かしを食うけれど、冷静に観ると、なかなかに興味深い映画。全体を覆うアンバランスさ、予想を裏切る展開と仕上がりが、逆に心地よい。
スペインの映画少年たち、アレックス・パストール/ダビ・パストールがそのまんま地道に成長して、こういうチャンスを貰った、という経緯があるようだ。そのチャンスを、まずまず以上に生かしているんじゃないか。
次回作が楽しみだ。
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