シェルター
監督:モンス・モーリンド/ビョルン・スタイン
出演:ジュリアン・ムーア/ジョナサン・リス・マイヤーズ/ジェフリー・デマン/フランセス・コンロイ/ネイサン・コードリー/ブルックリン・プルー/ブライアン・アンソニー・ウィルソン/ジョイス・フューリング/スティーヴン・リシャード/ジョン・ピークス
30点満点中16点=監4/話1/出3/芸4/技4
【多重人格の男、その狙いとは?】
心理学者のカーラは、同じく心理学者の父からひとりの患者ディヴィッドを紹介される。面談で明らかとなったのは、ディヴィッドは代用人格で、その向こうにはアダムという真の人格が存在するということ。多重人格に否定的な立場を取るカーラはディヴィッドやアダムの過去を探り、彼を治療しようとする。だが第三の人格ウェスが登場し、さらにはカーラの身の周りでは奇妙な事件が相次ぎ、家族にも危険が迫るのだった。
(2010年 アメリカ)
★ネタバレを含みます★
【見た目はいいが、お話としては整合性がイマイチ】
監督のモンス・モーリンドとビョルン・スタイン、撮影のリヌス・サンドグレンは、スウェーデンでアクションやサスペンスを撮っていた人たちらしい。これがアメリカ進出第一作で、『アンダーワールド4』にも起用された模様だ。
確かに『アンダーワールド』に向く、青白くてシャープな絵、間をタップリと取りながらもショッカーを挟み込む軽快な展開。冒頭の『裏窓』ライクなカメラワークとか、舞台に奥行きを持たせる画面構成とか、捨てカットもオモワセブリックに見せる配慮とか、それなりにセンスはありそう。
ロケーションや音楽も手堅く恐怖を盛り立てていく。
いかにも暗い過去を抱える学者然とした様子でキャッチーなジュリアン・ムーア、抑えた芝居で多重人格を好演するジョナサン・リス・マイヤーズのふたりもマズマズ。この主演タッグが上手に映画を引っ張っていく。
カーラもパパも一方的に電話を切る、という場面を連続させて、ああそういうふうな家庭に育ったんだな、と感じさせる部分が面白い。
全体として、低予算であることをあまり感じさせず、スタイリッシュながらもそれだけに頼らない、いい見た目だとは思う。
ただ、お話としては未完成。
純オカルトなのはいいとしても、カーラが多重人格を否定する理由、色覚異常、犠牲者の体に現れる変調など、サイエンス的な要素や物語にリアリティを与えるはずの部分を「ひょこっと出しておいてフォローしないまま引っ込める」ところが多すぎるのはいただけない。
また事件の経緯を考えれば、真犯人である牧師と呪術師の婆ちゃんおよび村人は「信仰を失くした者には天罰を」という行動原理の点でイコール。なのにカーラが婆ちゃんたちに助けを求めるってのは、まぁそうするしかないとしても、そこにカーラや婆ちゃんの葛藤がなければ不自然だろう。
どうも、事件が一本の線で結びつかないし、オチも「やっぱりな」だし、いってみれば『世にも奇妙な物語』レベルだし、ブルックリン・プルーちゃんの見せ場は少ないしで、不満の残る作品である。
●主なスタッフ
脚本は『“アイデンティティー”』のマイケル・クーニー。
編集は『16ブロック』のスティーヴ・ミルコヴィッチで、プロダクションデザインは『ダウト』や『クイズ・ショウ』に携わったティム・ガルヴィン。衣装は『バンテージ・ポイント』や『ラスベガスをぶっつぶせ』のルカ・モスカ。
音楽は『リーピング』や『ホワイトアウト』のジョン・フリッゼル、サウンドエディット&デザインは『インサイダー』などのグレッグ・バクスターと『ソルト』のピーター・スタウブリ。
VFXは『アイズ』のマーク・ヴァリスコ。
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投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2012/12/30 00:27