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2012/12/17

ウソから始まる恋と仕事の成功術

監督:リッキー・ジャーヴェイス/マシュー・ロビンソン
出演:リッキー・ジャーヴェイス/ジェニファー・ガーナー/ジョナ・ヒル/ルイス・C・K/ジェフリー・タンバー/フィオヌラ・フラナガン/ロブ・ロウ/ティナ・フェイ/ドナ・ソルベッロ/コナー・レイバーン/ジェイソン・ベイトマン/フィリップ・シーモア・ホフマン/エドワード・ノートン

30点満点中17点=監3/話4/出3/芸4/技3

【ウソを発明してしまった男】
 誰もが本音だけで会話し、ウソという概念がないまま発展した社会。歴史講義映画の脚本家マークは、会社をクビになり、デートの相手アンナからは「面白い人だけれど、その気はない」とフられてしまう。引っ越し費用を引き出すため銀行へ行ったマークは、つい残高を多めに申告、いいぶん通りの額を手にすることに。人類史上初、ウソを発明してしまったマークは、その後も作り話で仕事の成功やアンナとの関係を引き寄せていくのだが……。
(2009年 アメリカ)

【それでもやっぱり正直に】
 ああ、なるほど。お世辞、建前、肝心なところは誤魔化そうとする意識。そんなものが取っ払われた“正直な世界”では、誰もが傷つけあいながら暮らしていくことになるのか。そりゃあ「虐げられずにすむ優秀な遺伝子」が欲しくなって当然だ。
 そういう、発想の論理的な飛躍が楽しい。

 ま、そうはいっても無理な設定ではある。ウソ=イマジネーションなんだから、ウソという概念がなければデザインやデコレーションも存在しえないはず。フィクションが作られないだけでなく、殺風景で面白味のない街並のように、料理や人づきあいや服装まで殺風景になってしまうだろう。娯楽といえば歴史を知ることやスポーツくらいか。あ、スポーツでも成立しないものがたくさんありそうだな。
 そしてマークのライバル・ブラッドがいうように「理解を超えるものは脅威だ」と、みんなが不安を抱えながら生きることになる。

 そんな中、ウソを手に入れた人間は、もはや全知全能の神だ。
 にしても「すべてが思い通りになるとしたら何をする?」という問いに対して用意された答えが「女の胸をさわる」って、男ってバカだなぁ。
 地位と名誉と金銭とを手に入れていくマーク=リッキー・ジャーヴェイスの“どや顔”も、ほんっと単純でバカ。

 撮りかたとしてはフツー。マークの「真実ではないささやき」で人々が幸福感を取り戻していく場面のようにテンポそのものはいいけれど、全体としてはTVサイズで鮮やかさはない。
 とりわけ、キーとなる最初のウソは、もう少し工夫してもよかったんじゃないだろうか。

 が、その後の展開、というか、こめられたメッセージはまずまず納得できるものではある。
 人を幸せにするためのウソ。ウソが呼ぶ聴衆の笑顔。ウソを手に入れたものは神になると同時に、まさしく神という人類史上最良の、かつ最悪のウソを作り出すという事実。
 そして、それでもやっぱり幸せをつかむためには、正直な心が何よりも大切だという真理。

 感動できるというほどでもなく、コメディとしては笑いも少ないけれど、ウソと本音の使い分けによってどれだけ僕らが傷つき、あるいは守られているかを再認識できる映画ではあるだろう。

●主なスタッフ
 撮影は『リトル・ミス・サンシャイン』のティム・サーステッド、編集は『28日後...』のクリス・ギル。プロダクションデザインは『運命のボタン』のアレクサンダー・ハモンド、衣装は『ホワット・ライズ・ビニース』のスージー・デサント、音楽スーパーバイザーは『ホリデイ』のダナ・ミルマン。

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