ナイト&デイ
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:トム・クルーズ/キャメロン・ディアス/ピーター・サースガード/ジョルディ・モリャ/ヴィオラ・デイヴィス/ポール・ダノ/フォーク・ヘンチェル/マーク・ブルカス/レニー・ロフティン/マギー・グレイス/リッチ・マンレイ/デイル・ダイ/セリア・ウェストン/ガル・ギャドット/ジャック・オコンネル
30点満点中19点=監4/話3/出5/芸3/技4
【国家機密の新エネルギーを巡る大チェイス】
妹の結婚式に参列するためボストンへと向かうジューン・ヘイヴンス。彼女が機上で出会ったのは、CIAのスパイ、ロイ・ミラーだった。永久バッテリー『ゼファー』とその開発者サイモンを奪った容疑で国家から追われるロイは、冤罪だと主張し、巻き込まれたジューンを何度も危機から救う。やがて『ゼファー』を狙う武器商人アントニオも彼らに追っ手を差し向け、追跡劇は南の島からオーストリア、そしてスペインへと繰り広げられる。
(2010年 アメリカ)
【意外と面白い、緩急自在のエンターテインメント】
仲間の裏切りによって陥れられたスパイ、たまたま出会った美女との逃避行、マクガフィンとして扱われる最新科学ガジェットに純朴なサイエンティスト、理解ある追跡役としての上司、そしてカー&ガンアクション。
ぶっちゃけていえば安い設定と展開、ちょっと手直しすれば『MI』シリーズだって構わないストーリーだろう。
でも、これが意外と面白い。
基本的には“笑いを散らしたスパイ・アクション”であり、リアリティは薄め、どうやったって主人公は死なないというお約束を踏まえたうえで突き進むご都合主義の物語なんだけれど、そこへ引き込んでいく術や軽快なテンポの作りかたが、実に上手い。
たとえば序盤、機内で襲われるまでは自然な演技や落ち着いたシーン作りを見せ、緊迫のアクションとトイレ内でテンパるジューンのカットバック、そして不時着と、少しずつスピードと重量感を上げていく。
その後も、ピンチだというのに陽気なBGMで彩ったり、ジューンが気絶したままでアドベンチャーが繰り広げられたり、ロイの両親にまつわるエピソードを挟んだり、ジューンのドライビング・テクニックを見せたり、と、緊張と緩和の連続でグイグイ引っ張っていく。
ま、前述の通り新鮮味には乏しいし、感心するようなアクションもない。それを上質な語り口で楽しく見せていく、という仕上げかただ。
主演ふたりの魅力も大きい。
もうこんな役は飽きるほどやったはずのトム・クルーズは、これまでのストイックさとは異なり、どこかジャッキー・チェンを思わせるハイテンションぶりを炸裂させる。あり得ないスパイ・アクションを見せる軽口のヒーローが、コミック的な主人公像を作り出しているのが面白い。
キャメロン・ディアスも、やっぱり根っこはコメディエンヌということなのだろう。ひとりでヤキモキとか無茶とか苦悩とかしちゃう部分がイヤミでなくクサくもなく、助けに来たロイを見つめる視線なんて身もだえするくらいにおかしい。
そうした演出と役者の力で、例の「気絶したままのアドベンチャー」をなぞるエンディングまで、まったく飽きさせず、クスクスとゲラゲラとハラハラを織り交ぜながら、一気呵成に突っ走る、楽しいエンターテインメントである。
●主なスタッフ
撮影のフェドン・パパマイケル、編集のマイケル・マカスカーとクインシー・Z・ガンダーソン、プロダクションデザインのアンドリュー・メンジース、衣装デザインのアリアンヌ・フィリップス、サウンドエディターのドナルド・シルベスターと、監督の過去作『3時10分、決断のとき』や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』と共通するスタッフが多い。
他では、音楽は『ボーン・スプレマシー』などのジョン・パウエル、SFXは『トロビック・サンダー』のマイケル・メイナルダス、VFXは『ノウイング』などのエリック・ダースト、スタントは『イーオン・フラックス』のチャールズ・クロウウェルや『スター・トレック』のロベルト・アロンゾなど。
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