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2013/03/16

十三人の刺客

監督:三池崇史
出演:役所広司/山田孝之/伊勢谷友介/沢村一樹/古田新太/高岡蒼甫/六角精児/波岡一喜/石垣佑磨/近藤公園/窪田正孝/伊原剛志/松方弘樹(以上が刺客集十三人)/吹石一恵/谷村美月/斎藤工/阿部進之介/内野聖陽/光石研/岸部一徳/平幹二朗/松本幸四郎/稲垣吾郎/市村正親

30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4

【暴君暗殺計画】
 江戸末期。明石藩主にして現将軍の弟でもある松平斉韶は残虐非道で知られ、家臣からの命懸けの諫言にも耳を貸そうとしない。その斉韶が老中に就任することとなり、政の危機を案じた老中・土井利位は、御目付の島田新左衛門に斉韶暗殺を命じる。島田は御徒目付組頭の倉永や浪人の平山など腕の立つ者を集め、折しも江戸から明石へと向かう斉韶ら一行の襲撃計画を実行へと移す。相手は十万石、こちらはわずか十三人。決死の戦いが始まる。
(2010年 日本)

【パワーで面白くしちゃった】
 1963年に、片岡千恵蔵、里見浩太郎、嵐寛寿郎、月形龍之介といった当時のオールスターキャストで撮られた作品のリメイク。もちろん古臭さはなく、しっかり現代風でスケール感もある仕上がりになっている。

 宿場町や城内などを再現した美術は見事だし、それらをぐっちゃどったと思い切りよく壊したり吹っ飛ばしたりと潔さも良。その場の音を拾ってさらにブーストするようなサウンドメイクにも迫力がある。
 そして三池監督らしく、画面ひとつずつがスタイリッシュ、陰影豊かに場面を切り取り、長めのカットでもビシっと決めてみせる。全体にスピーディな展開ながら、芝居を見せる、という意識もうかがえる。

 その芝居=出演陣の醸し出す味がいい。役所広司や山田孝之の上手さは前面に出て、伊原剛志や石垣佑磨の凛々しさも申し分ないし、伊勢谷友介のトボケた風も楽しい。
 松方弘樹の剣の振るいかたには他の役者にはない“年季”というものが確かに感じられるし(単純にカッコいいんだけれど、ギリギリでリアリティも保っている)、出番は少ないながら重要な役に平幹二朗や松本幸四郎というビッグネームを持ってきたことも、作品の格を上げるのに寄与しているといえる。

 唯一、斉韶役の稲垣吾郎だけが時代劇っぽくなくて浮いた感じ、美しくない印象を与えるのだが、実はそれが正解。感情移入を阻み、なんやかんやと知ったような口をきく姿に対して「なんだよコイツ」と嫌悪を覚えるのだ。斉韶憎しの思いが募るのだ。

 と、見た目の出来栄えは水準以上なんだけれど、シナリオがちょっと弱いことは否めない。
 画面に人物名を乗っけたり出来事や老中の立場の解説などを説明セリフに頼ったり、あまりスマートではない。反面、斉韶の非道ぶりなんかもっとグチャグチャに出してもよかったと思うし、島田の人となりが一切省かれているから彼のもとに協力者・志願者が集う展開に説得力がない。
 宿場に張り巡らせた罠・仕掛けも「策ってそれだけ?」と感じさせる程度のもの。たかだか十三人なのに刺客たちのキャラクターもきっちり描き分けているとはいいがたい。

 まぁそれでもカッコよく楽しく仕上がっちゃうところが、この監督のセンスであり、美術をはじめとする優秀なスタッフと豪華なキャストが発するプロジェクト全体のパワーのおかげ、ということなのだろう。

●主なスタッフ
 オリジナル脚本は池上金男、今回の脚本は天願大介。
 撮影は『バッテリー』の北信康、編集は『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』の山下健治。美術は『大日本人』『TOKYO!』の林田裕至、人物デザインは『おくりびと』の柘植伊佐夫。
 音楽は『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』の遠藤浩二、音響効果は『クライマーズ・ハイ』の柴崎憲治。VFXは『妖怪大戦争』の坂美佐子、スタントは『ゼブラーマン』の辻井啓伺。

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