エクソシスト
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:エレン・バースティン/マックス・フォン・シドー/リンダ・ブレア/ジェイソン・ミラー/リー・J・コッブ/キティ・ウィン/ルドルフ・シュントラー/ジャック・マッゴーラン/ウィリアム・オマリー/バートン・ヘイマン/ピーター・マスターソン/マーセデス・マッキヤンブリッジ(声)
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3
【その子の中に棲むもの】
ワシントンで映画撮影中の女優クリス・マクニールは、娘のリーガンや使用人らと現場近くで仮住まいを続けている。彼女が気になっているのは、裏の教会で働くダミアン・カラス神父だ。神父は信徒たちの相談役としての仕事や、ひとり暮らしで脚の悪い母親を気に病んでいた。あるときリーガンがまるで別人のような振る舞いを見せるようになる。脳の疾患か、精神性の病か。医者はショック療法としての悪魔祓いも勧めるのだが……。
(1973年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【ジリジリとした前半、いきなりの後半】
ちゃんと観たことはないけれど知っている、という人が多いはずのクラシック。だが、たいていの人がイメージする“グロいホラー”とは、かなりイメージを異にする。
なにしろ実際に除霊をおこなうのはラスト15分ほどだけですから。前半の1時間はほぼ何も起こりませんから。
でも、その部分が効いている。
ゆっくりたっぷりと、メリン神父による発掘作業、マクニール家の日常やカラス神父の生活背景を描いていく。普通ならすっ飛ばしていい、本題とは関係のないシーン、歩く姿や別れ、会話やパーティ、検査の様子などをジリジリと見せていく手法。
かといって冗漫ではなく、然るべきタイミングでポンと時間を飛ばしてリズムやテンポを生み出すことも忘れない。
BGMが削ぎ落とされ、現場にある音をSEとして機能させているのも特徴だ。耳慣れないアラビア語や詠唱、不協和音のようなノイズに人の叫び。大事件が何も起こらなくても、不思議と漂う違和感。このあたりの空気の作りかたは極上だ。
こうして冷え冷えとした物語世界や人物たちに観客を馴染ませておいてから、急激にギアチェンジ。一気に除霊へとなだれ込んでいく。
もう細かな説明とか手順とか約束事とかは抜きにして、唐突すぎるともいえる展開から問答無用のエンディングへ。観る者を置いてけぼりにしかねないクライマックス。
『フレンチ・コネクション』もそうだったけれど、これがフリードキン監督ならではの映画文法なんだろう。さすがにここでは不親切というか、乱暴すぎるように思えるが、あくまでも「こんなことがありました」というだけのストーリーを、力で見せ切ってしまう荒業には恐れ入る。
でもやっぱり、ギアの上げかた=終盤の“まとめ”は、いきなり感を強く受け取ってしまうなぁ。
●主なスタッフ
撮影監督のオーウェン・ロイズマン、編集のノーマン・ゲイ、衣装のジョセフ・フレットウェルIII世、サウンドのクリストファー・ニューマンなど多くのスタッフが『フレンチ・コネクション』と共通している。
スペシャル・メイクは『タクシードライバー』や『アマデウス』のディック・スミス、音楽は『カッコーの巣の上で』のジャック・ニッチェ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント