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2013/03/01

スプライス

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:エイドリアン・ブロディ/サラ・ポーリー/デルフィーヌ・シャネアック/ブランドン・マクギボン/シモーナ・メカネスキュ/デヴィッド・ヒューレット/アビゲイル・チュー

30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4

【生み出してはならないもの】
 さまざまな動物の遺伝子を結合(スプライス)させて、まったく新しい2体の生物“ジンジャー”と“フレッド”を作り出した生化学者のクライヴとエルサ。会社側はその成果=ジンジャーとフレッドからタンパク質を抽出、治療薬などを開発することを求めたが、クライヴとエルサは密かに人間の遺伝子も組み込んだ実験を開始する。そうして生まれた新生物は驚異的な速度で成長し、クライヴとエルサはその生物をドレンと名づけて育て始める。
(2009年 カナダ/フランス/アメリカ)

【狂気といえば狂気だけれど】
 カナダではそこそこ評価されているようだけれど、個人的には「どうしちゃったんだ、ナタリ」という感想。
 いや、出世作『CUBE』があまりに凄すぎて、以後は何を撮ってもあの輝きには及ばないという哀しい運命を背負ったクリエイターではあるんだけれど、それでも近作にはどこかに“この人らしい狂気や鋭さ”みたいなものはあったよなぁ。

 撮りかたは、けっこうフツー。各カットの質感などには味があるし、美術やVFXや特殊メイクなどは頑張っていると思うし、ジンジャーとフレッドのデザインなんかナニを想起させてニヤニヤしてしまうのだが、「ここ!」というインパクトに欠ける作り。ショッカーも鮮やかさも足りない。

 そのぶん、ストーリー展開で勝負しようという算段だったのか。まぁ確かに面白味はあるだろう。
 最初はSFサスペンスのノリ。神の領域への侵犯って、もう使い古されている題材だとは思うが、まぁそこは看過する。
 そこからアクロバティックに、子育て映画、さらには歪んだ母性とか近親なんちゃらとか倒錯した愛の世界へと突っ込んでいく。そして最後には『エイリアン3』の要素もまぶしてのホラー。

 どこへ転がるのか、狂気を側において観る者を翻弄するあたりはナタリらしさなのかも知れない。と同時に、肺の近くに映っている謎の臓器とか、ジンジャーとフレッドの変化、マザコンのエルサといった必要な要素も盛り込み、コロコロと表情を変えるストーリーに一応のスジは通している、ともいえるだろう。

 が、ベクトルがフワフワしているのは確かだし、クライヴとエルサの関係やドレンの成長過程が十分に描けていなかったりで、本当にコロコロと落ち着かないまま、最初に決めておいたクライマックスへ向けポンポンと状況ばかりが進んでいく、というイメージ。
 だいたい、冒頭のお産(?)シーン、最初の食事、ドレンを隠して育てるあたりなど、各所の動作・セリフ・展開には、なんとなくIQの低さが漂っている。要するに、全体の構成だけじゃなくディテールもマズイ。

 ラストシーン、女性社長とエルサのシルエットからは、ドレンら新生物が「科学の子」だということがわかる。思えば最初っからドレンは無性生殖だったわけだし、エルサの生い立ちも考えると、結局のところ「命は、愛ではなく制御の下に置かれるべき」というシニカルなテーマへと落ち着く。
 でも、途中があまりにフワフワしているため、その“落ち”も上手く伝わってこないのだ。

 若い漫画家が描いたデビュー2作目の1巻もの、といった雰囲気のツメの甘いSFを、フツーに撮っちゃった、という仕上がりである。

●主なスタッフ
 撮影は『大停電の夜に』『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』の永田鉄男、編集は『NOTHING ナッシング』でもナタリ監督と組んだミシェル・コンロイ。
 プロダクションデザインは『宇宙戦争』『レモニー・スニケット』でセットデザイナーを務めたトッド・チェルニアフスキー、衣装は『ソウ』シリーズや『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』のアレックス・カヴァナー。サウンドは『サイレントヒル』のデイヴィッド・マッカラム。
 SFXは『アサルト13 要塞警察』のジェイソン・ボード、特殊メイクは『サロゲート』『イングロリアス・バスターズ』のハワード・バーガーら、VFXは『X-メン』のボブ・ムンロ。

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