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2013/04/30

ヒックとドラゴン

監督:クリス・サンダース/ディーン・デュボア
声の出演:ジェイ・バルシェル/ジェラルド・バトラー/クレイグ・ファーガソン/アメリカ・フェレーラ/ジョナ・ヒル/クリストファー・ミンツ=プラッセ/T・J・ミラー/クリステン・ウィグ/ロビン・アトキン・ドーンズ/フィリップ・マクグレイド/キーロン・エリオット/アシュリー・ジェンセン/デイヴィッド・テナント

30点満点中20点=監4/話4/出4/芸4/技4

【ドラゴンと若者の友情】
 バーク島に飛来し、家畜や住居を襲う無数のドラゴン。ここで暮らすバイキングたちにとっては、ドラゴン退治こそが勇気の証だ。族長ストイックの息子で鍛冶屋見習いのヒックも戦うことに憧れていたが、傷ついた“ナイト・フューリー”を殺せず、こっそりと助けてしまう。トゥースと名づけたドラゴンと次第に仲良くなるヒック。いっぽうストイックはドラゴンの巣への遠征を敢行し、島に残るヒックら若者たちにも訓練を命じるのだった。
(2010年 アメリカ アニメ)

【映画的なアニメ】
 最初は“絵”の美しさに魅了される。
 炎と光と影、ヒゲや髪の毛の質感、風、水、雲、熱気、鉄の重さなど、あらゆるものがキチンと表現されている。人形っぽいフォルムを持つキャラクターたちは反動や「ちょっとした身じろぎ」を感じさせながら動く。

 それらを“うつす”方法も手が込んでいて、背景が霞んでいたり露出がアンダーだったり、舞台に遠近高低があったりと、世界は立体感豊かに作られていて、カメラが揺れたり一人称視点も用いたりとダイナミック。
 なんでも撮影アドバイザーに『告発のとき』『トゥルー・グリット』のロジャー・ディーキンスを招いたそうで、彼のセンスが反映されたおかげで生き生きとした画面も生まれたのだろう。

 それぞれにユニークなアクションを見せてくれるドラゴン(いろいろな種類がいる、ってのは盲点だったなぁ)たちの様子も楽しい。デザイン、肌の質感、飛翔のスピード感、重量感などが素晴らしく、猫や犬や鳥やコウモリなど、さまざまな動物を十分に研究したんだろうな、ということも感じられる。
 トゥースが枝をくわえて地面に描いた絵は意味不明、というのも重要なポイント。意味不明だからこそ「たがいに理解しえないもの」に対する温かな好奇心や不思議な親近感、そして、わかりあおうとする意欲、わかりあえたときの喜びもわいてくるのだ。

 が、何といっても本作最大の魅力は「映画としての作り」だろう。
 トゥースが絵を描くところ~ヒックが初めてトゥースにタッチするまでの流れのよさは抜群。ヒックがドラゴンの生態を自然と学んでいき、それがドラゴン退治のトレーニングに生かされる展開も楽しい。そして、トゥースの笑顔がクライマックスで果たす役割の憎らしさ。

 全体に「説明するのではなく、見せるだけで観客に事態や心情をわかってもらい、テンポよくお話が進んでいく」というストーリーテリングが徹底されていて、実に映画的だ。
 恐らく字幕なしでも、本作の内容は万人に理解できるはず。それだけシンプルなストーリー(どうやら原作とはかなり内容的に異なるらしい)ともいえるわけだが、そのシンプルさを「見て楽しい」映画へと昇華させた腕に感服させられる。

 人間、動物、両者の関係、物語、そして映画に対する愛がしっかりとあるからこそ、これだけの作品に仕上がったのだろう。
 監督と脚本は『リロ&スティッチ』のコンビ。女の子向けと思ってまったくのノータッチだったけれど、見てみなければなるまい。もちろん、製作中という本作の続編も大いに楽しみだ。

●主なスタッフ
 脚本および監督は『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』のウィリアム・デイヴィス。
 編集は『スター・トレック』のマリアン・ブランドンと『レミーのおいしいレストラン』のダーレン・T・ホームズ。
 プロダクションデザインは『ライオン・キング』のケイシー・アルティエリ、音楽は『ハッピーフィート』などのアニメ作品のほか『ボーン・スプレマシー』といったサスペンスでも力をふるうジョン・パウエル、サウンドチームには『Mr.インクレディブル』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』などのランディ・ソーム、『カールじいさんの空飛ぶ家』『ベオウルフ』などのジョナサン・ナル。
 VFXは『フォレスト・ガンプ』などのクレイグ・リング、アニメーター陣は『マダガスカル』のキャシディ・カーティス、『カンフー・パンダ』のゲイブ・ホルドス、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のスティーブン・ホーンビー、『シャーク・テイル』のクリストフ・セランド、『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』のデイヴィッド・トーレスら。

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受信: 2013/04/30 14:21

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