9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~
監督:シェーン・アッカー
声の出演:イライジャ・ウッド/ジェニファー・コネリー/ジョン・C・ライリー/クリストファー・プラマー/マーティン・ランドー/クリスピン・グローヴァー/フレッド・タタショア/アラン・オッペンハイマー/トム・ケイン/ヘレン・ウィルソン
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【終末後の世界、動くのは人形だけ】
人間とマシンとの戦争が終わり、もはや動くものは無くなって荒廃した世界。ある科学者の部屋で背中に「9」と書かれた人形が目覚め、彼は傍らに転がっていた謎のパーツを持ち外界へと出る。だが、そこで出会った親切な老人の人形「2」とパーツは、突如現れたモンスターによって強奪されてしまう。救出を訴える9に対し、人形たちのリーダー「1」は冷淡だ。仕方なく「5」とともにモンスターの棲む塔を目指す9だったが……。
(2009年 アメリカ アニメ)
【見た目は魅力的だけれど】
2005年製作・2006年のアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた同名短編(11分)を80分の長編にリメイクした作品。
終盤までは、かなり好き。
赤茶けた大地や廃棄物、霞、砂嵐など終末後の世界はなかなか魅力的に描かれているし、麻布や金属など細かなテクスチュアの表現は上々。ガラス越しの映像や一人称視点など見せかたも多彩だ。
そして、愛らしくもグロテスクな“人形”たちが動く。上下左右高低と立体的に、走ったり滑ったり飛びまわったりとダイナミック。目の焦点・絞りを細かく調整するなどディテールも楽しいし、磁石による痺れで快感を得るといったアイディアも愉快。
臆病で慎重な指導者、機械好きの老人、好奇心と探究心にあふれる双子、優しい若者、心理を探る引きこもり、勇気と行動力に富む女性、力を誇示する愚かな巨漢、一直線な主人公と、キャラクターもバリエーション豊か。それぞれ立ち姿や歩きかたまで性格を反映しているし、彼らの「秘密」が明らかになると、その性格の違いの理由までわかるという設定も面白い。
短尺のテンポのよさともあいまって、よくできたADVゲームをプレイしているような気分になる。
ただ、せっかくバリエーション豊かな各キャラクターは描きこみが足りず表面的になっているのも確かだし、枝葉がなく行動範囲が狭いぶん物語の奥行きや広がりに欠けるのも事実。
そういう“浅さ”を残したまま、謎のパーツの働きを観念的な方向へ向かわせていて、ストーリー的なまとめには難あり。なんだか「自分を成仏させるための、科学者の自己憐憫的な企み」という話になっちゃっていて、後味と居心地が悪い。
それに考えてみれば、いろんな人物が出てきて、それぞれ身勝手に、あるいは協力しながら事態に向き合って、実は彼らは……という構成って、観たことがあるような気がするぞ。
監督・原案は『王の帰還』のVFXとかを担当した人で、シナリオは『モンスター・ハウス』や『コープスブライド』のパメラ・ペトラー、プロダクション・デザインはディズニーのセル・アニメに関わっていた人たち。
その他、コンセプト・デザインとかVFXのスタッフ・リストを見ると、なんか寄せ集めっぽい雰囲気。
まさか「寄せ集めによって生まれるもの」というテーマを、設定にも製作体制にも潜ませた、というわけではあるまい。
ともかく、見た目は魅力的だけれど、1本のストーリー映画としての味わいやまとまりの点で不満の残る作品だ。
●主なスタッフ
音楽は『アンフィニッシュ・ライフ』のデボラ・ルーリー。サウンド・デザインは『パーシー・ジャクソン』や『クローバーフィールド』のウィル・ファイルズ。
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