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2013/04/26

戦場でワルツを

監督:アリ・フォルマン
声の出演:アリ・フォルマン/オリ・シヴァン/ロニー・ダヤク/シュマル・フレンケル/ザハヴァ・ソロモン/ロン・ベン=イシャイ/ドロール・ハラジ/ミッキー・レオン/イェヘッケル・ラザロフ

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【蘇る記憶】
 映画監督のアリは、友人から「26匹の犬に取り囲まれる」という奇妙な夢の話を聴かされる。彼は戦時中、吠えて敵に危険を知らせる犬たちを射殺していたのだった。以来、アリ自身も従軍時のフラッシュバックに悩まされるようになるが、あの1日、20年前に起きた『シャティーラの虐殺』だけは記憶から抜け落ちていた。アリは当時の友人や同じ部隊にいた仲間、心理学者などを訪ね歩き、その日何があったのかを思い出そうとする。
(2008年 イスラエル/フランス/ドイツ/アメリカ
       フィンランド/スイス/ベルギー/オーストリア アニメ)

【当たり前に毒された世界の向こうへ】
 題材となっているのは1982年、イスラエルによるレバノン侵攻と、その際に起きたサブラ・シャティーラにおけるパレスチナ難民虐殺事件。
 歴史的背景などをここでまとめるのは避ける。むしろ「ある国とある国が戦って、罪もない人たちが大勢殺された」という事実を理解すれば、それだけでいい。

 実際に当時従軍した友人や関係者らにインタビューをおこない、その回想談話をそのまま音声として採用、語られる内容をアニメーションとして描き起こす、という作りになっている。

 そのアニメは、アメコミ風あるいはTVゲーム風(両者の融合である『グランド・セフト・オート』にイメージは近い)のグラフィック・デザイン、人の動きは紙芝居的にカクカク、周囲の光に合わせて大胆に人物の色合いも設計するという奇抜な見た目でありながら、恐らくは実写をもとにつくられた背景美術とCG、実写的なアングル/カメラワークによって、不思議な世界が作り出されている。

 各人の口から語られる内容は、前線における凄惨な体験そのもの。が、漂ってくるのは戦争じたいの恐怖ではなく「すでに戦争は人間にとって日常と化している」、あるいは「戦時でも日常は続く」という事実
 ある国や地域において、戦争体験=殺しあいや銃後での暮らしは、決して特別なことではなく、たとえば学生時代のサークル活動や家族との思い出などと同じように、人の記憶に根づき、人格や社会を作る1要素となっているのだ。
 いわば、当たり前のように戦争がある、この星。

 そして、実話と実体験を、アニメというクッションを置いて視覚化し、どこか遠い世界の出来事として感じさせ、または冷静に分析させようとする気配もあるこの作品は、ラスト、いきなり観客を現実へと放り込む。
 そこで発せられる言葉はわからない。が、感情はわかる。人類が共通して持つ、不条理に対する怒り、痛み、哀しみ。それらを炸裂させて、「殺しあいを当たり前のことにしてはいけない」と、それこそ当たり前のメッセージを放り投げてくるのだ。
 その試みがもたらす鋭角なパワーは強烈である。

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