コララインとボタンの魔女
監督:ヘンリー・セリック
声の出演:ダコタ・ファニング/テリー・ハッチャー/ジェニファー・ソーンダース/ドーン・フレンチ/キース・デヴィッド/ジョン・ホッジマン/ロバート・ベイリー・Jr/イアン・マクシェーン
吹き替え:榮倉奈々/戸田恵子/小宮和枝/宮寺智子/劇団ひとり/山路和弘/浪川大輔/斉藤志郎
30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4
【謎の扉の向こうには不思議な世界が】
やんちゃな少女コララインが引っ越した先は、殺風景な田舎町にあるオンボロアパート。住人は奇妙な人たちばかり、近所に住む子どもといえばヘンテコなワイビーだけ、両親は仕事に忙しくてかまってくれない。けれどアパートで見つけた小さな扉の向こうには素敵な世界が待っていた。ボタンの目を持つ“別のママとパパ”は優しく、住人たちも陽気。夢中になるコララインだったが、それは彼女を虜にしようと企む魔女の狡猾なワナだった。
(2009年 アメリカ アニメ)
【仕上がりはいいけれど、決定的な楽しさに欠ける】
アリスを思わせておいて第四惑星風ディストピアへと突入していくという幻惑のストーリー。それを、ポップな色づかいなのにどこかダーク、虫とかネズミとか針金っぽいフォルムの人たちとか、日本人の感覚にはあまりないイメージの、夢(もちろん悪夢)に出てくる系の世界で表現して幻惑感を広げる。
日本人イラストレーター・上杉忠弘がコンセプトアートを担当したことで話題となった本作。でも、そのコンセプトアートを大胆に拡大・アレンジして実体化させている感じ。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』で知られる監督自身がプロダクションデザインを務めていて、むしろそっちの支配力が強いんじゃないだろうか。
しかも、人形アニメなんだか、それを模したCGなんだか、見分けのつかない仕上がり。それがまた幻惑を呼ぶ。いずれにせよ、布、土、霧などの質感は素晴らしく、トンネルのフワフワっとしたところなんか最高だ。
そうした見た目だけに頼らず、セリフを抑えたシーンを作ってメリハリを利かせるなど演出面もいいし、多彩なカメラの位置&動き(撮影は『コープスブライド』のピート・コザチク)にもセンスを感じる。
ブリュノ・クーレ(『コーラス』)の音楽も、フワっと世界を包み込んだりスリルを盛り上げたりと自由自在。
キャラクターも大きな魅力で、コララインのちょっと曲がった鼻は小首をかしげる動きにシックリと収まり(作品全体としても首の動きやラインはユニーク)、独特のまぶた、指先までしっかり演技するあたりも可愛い。
今回は日本語吹き替えで観たのだが、榮倉奈々は意外にも悪くなく、劇団ひとりも絞った声質が上々。そのふたりをベテラン勢がしっかりと支えていてトータルの安定感やまとまり感もある。
と、褒めるところも好きなところもたくさんあるのだけれど、なんというか、そうした演出や展開やキャラクターが「心からのワクワク・ドキドキ・驚き」につながっているかというとそうでもなく、決定的な楽しさ・面白さには欠けているように思える。
それは悪夢系デザインのせいではなく、世界の小ささや、幻惑の中に観客を引き込んだだけで満足してしまったところに原因があるんじゃないだろうか。
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