ファンタスティック・プラネット
監督:ルネ・ラルー
声の出演:ジェニファー・ドレイク/エリック・ボウジン/ジャン・トパート/ジャン・ヴァルモント
30点満点中15点=監4/話2/出3/芸4/技2
【不思議な惑星、人とドラーグの物語】
惑星イガム。瞑想によって生きる巨大なドラーグ人たちが支配するこの星では、野蛮な人間どもの異常な繁殖力が憂慮され、大規模な人間狩りの必要性が説かれていた。そんな中、ドラーグ人の少女ティバに捕えられた人間の赤ん坊テールは、ペットとして飼われながらもドラーグ人たちの学習システムを利用してさまざまな知識を獲得。やがて逃げ出したテールは、隠れて暮らす人間たちのグループと合流するのだが、人間狩りの日が近づき……。
(1973年 フランス/チェコスロヴァキア アニメ)
【絵を動かして世界を見せる】
原作ステファン・ウルと監督ルネ・ラルーは『時の支配者』のコンビ。本作は『時の支配者』より約10年前の作品で、グラフィック部分は諷刺画家・イラストレーターのローラン・トポルによるもの。
見た目的には絵本(または挿絵)を“そのまんま動かす”というイメージで作られている。背景はあるけれど舞台に奥行きは乏しく、線画のタッチが強い人物は左右(だけ)に動き、動画の数は少なめ。
その特異性に加えて、魚類からの進化なのか精神生物なのか無個性で不可思議なドラーグ人たち、由来不明なファッションを身にまとう人間たち、擬人化的に描かれる奇妙な動物・植物たちなどデザインワークの奇抜さもあいまって、唯一無二の世界が現出する。
そう、ここで描かれているのは“世界”。ストーリーを語るよりも1つの異世界の構築をこそ目指しているというか、世界を見せることが物語とイコールになるというか、ともかく、観る者に惑星イガムのありようとドラーグ人たちの社会を提示する映画になっている。
そしてそこには恐らく、労働者階級と搾取階級の対立・対比、あるいは人類の行く末といった諷刺もこめられているのだと思う。
ただ、やはりあくまで「絵を動かして世界を見せる」だけの観念性の強い作品では、ちょっと面白味に欠ける。世界観やデザインは『GANTZ』とか『進撃の巨人』あたりに影響を及ぼしているんだろうなぁと、資料的な観かたはできるだろうけれど。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント