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2013/05/03

Disney'sクリスマス・キャロル

監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジム・キャリー/ゲイリー・オールドマン/コリン・ファース/ロビン・ライト・ペン/ボブ・ホスキンス/フィオヌラ・フラナガン/キャリー・エルウィス/ジャック・バーンブルック/レスリー・マンヴィル/フェイ・マスターソン/カラム・ブルー/モリー・C・クイン/ダリル・サバラ/ライアン・オチョア

30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4

【自らの過去と現在、未来を見た男は……】
 会計事務所を営むスクルージはケチで有名。クリスマスだといって浮かれる人々を嘲笑い、甥フレッドからの食事の誘いを断り、従業員ボブを安い賃金でこき使い、寄付の依頼には「貧乏人など死ねばいい」と言い放ち……、とにかく自分の得にならないことには興味ゼロの人物だ。イブの夜、3人の精霊がスクルージのもとを訪れ、彼自身の歩んできた過去、いま人々にどう思われているか、待ち受ける未来を見せるのだった。
(2009年 アメリカ アニメ)

【出来栄えや雰囲気はいいのだが】
 古き佳き時代、というか、どこか懐かしさを感じさせるオープニング。以後も全編に渡って、今風ではない空気が流れる。

 いや、当然のように表現技法などは進化しているし、そもそも3Dアニメだし、画面は暗くて怖いながらもシャープだしで、決して“古い”という感じではない。けれど、無駄のない展開・描写、前時代の合成を思わせる宙に浮かぶ緑色の霊、楽しさも落ち着きもある安定感たっぷりのアラン・シルヴェストリの音楽などが、なんとなく「昔ながらのファミリー・ムービー」といった趣を感じさせるのだ。

 丁寧さも、そう思わせる一因だろう。
 たとえば街角での数人の合唱は、人数分の歌声や動きをきっちり見せる細かさ。声の響きは場所によって異なるし、吐き出される白い息もリアル。
 肌の質感が素晴らしく、目の動きは生き生きとしていて、CGで作られた登場人物にしっかりと命を与える。

 ジム・キャリー、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ボブ・ホスキンスといった、ちょっと濃い目でクセはあるけれどちゃんとお芝居できる面々が、本人の顔そのままに何役もやってくれる楽しさもある。
 題材/ストーリー/キャラクターが“芝居らしい芝居”に馴染む。『ポーラー・エクスプレス』や『ベオウルフ/呪われし勇者』よりパフォーマンス・キャプチャは効いているんじゃないだろうか。

 また、再現された19世紀の街をカメラが飛び、1カットでクリスマス・イヴの喧騒を見せ切るタイトル・バックからは「さんざん映画化されたこのお話を、3DCGアニメにする意味」も感じ取れる。

 ただ「感謝と慈悲を共有するクリスマスの意義を説くクラシック」という機能を持つのが『クリスマス・キャロル』。さすがにその枠からハミ出すことはできず、現代の日本人からすると、浅くて定型的で説教臭いものに感じられてしまうのは仕方のないところか。

 スクルージのビフォアにおいては、もっと彼が金に意地汚いところ、ボブ・クラチットやお手伝いさんや甥っ子との関係、周囲からどう疎まれているかをたっぷり描くべきだったろう。精霊との旅路でも、「何故そんな風に変わってしまったのか」を解き明かしたり、自らの内面にジタバタする様子を見せたりなど、掘り下げられたはず。ドタバタに終始する“未来”も、他のパートとの違いが大きすぎる。
 結果として、「ケチな人の改心」をあまり説得力なく描いている作品になってしまったのが、残念である。

 ああそれと、かなり格言っぽい言い回しや古語英語、ジム・キャリーが無理やり喋るイギリス英語(母親がスコットランド系なので無理やりではないのかも知れないが)など、吹き替えではわからない要素に満ちているので、こういうのを観ると「もっと英語を勉強しておけばよかったなぁ」と思う次第。

●主なスタッフ
 撮影のロバート・プレスリー、編集のジェレマイア・オドリスコル、プロダクションデザインのダグ・チャン、音楽のアラン・シルヴェストリ、サウンド・エディターのデニス・レナード、衣装のアンソニー・アルマラズなどかなりの主要スタッフが『ベオウルフ/呪われし勇者』や『ポーラー・エクスプレス』と共通している。
 ほかではSFXが『アリス・イン・ワンダーランド』のマイケル・ランティエリ、VFXが『コンスタンティン』のジョージ・マーフィー、アニメーション・スーパーバイザーが『ナルニア国物語』のジェン・エンバリーとキース・ケロッグ。

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