« 宇宙ショーへようこそ | トップページ | リンカーン »

2013/05/14

プリンセスと魔法のキス

監督:ジョン・マスカー/ロン・クレメンツ
声の出演:アニカ・ノニ・ローズ/ブルーノ・カンポス/キース・デヴィッド/マイケル=レオン・ウーリー/ジェニファー・コディ/ジム・カミングス/ピーター・バートレット/ジェニファー・ルイス/オプラ・ウィンフリー/テレンス・ハワード/ジョン・グッドマン
吹き替え:鈴木ほのか/丹宗立峰/安崎求/小林アトム/三瓶由布子/駒田一/石住昭彦/荒井洸子/杉村理加/三上市朗/玄田哲章

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3

【夢を叶えるためのキス】
 自分のレストランを開くために働きづめのティアナと、王子様の登場を待つ令嬢シャーロット。幼馴染のふたりが暮らすニューオーリンズに、マルドニアのナヴィーン王子がやって来る。パーティに王子を招待したシャーロットだったが、王子はブードゥーの魔術師にカエルへと変身、その巻き添えでティアナまでカエルの姿に。ニセモノの王子がシャーロットに近づく中、ティアナとナヴィーンは元に戻る方法を求めて沼地の奥へと進んでいく。
(2009年 アメリカ アニメ)

【誠実さが底力】
 デジタル色とSF色の濃かった『ルイスと未来泥棒』『ボルト』から手書きのセル・アニメ&ファンタジーへの回帰が1つのテーマになっているようだけれど、それはそれなりに成功している。

 一方向から場面を見た紙芝居的なカットがやや多くて立体感が薄いように思われるものの、ディズニー伝統の動き(フルアニメからリミテッドアニメへと上手に落とし込む技を感じる)に現代風のアクションもプラスしてあるようなイメージで、見た目は楽しい
 キャラクターごとにアニメーターを置いているらしく、それを違和感なく1つのカット/シーン/作品にまとめ上げてしまうのも、たいしたもんだ。

 あらためて思ったのは、動物の擬人化デザインとフォルムの独自性。日本だとカエルはピョン吉とかケロロ軍曹に、昆虫はハッチとかミクロイドSになって、それはそれで日本らしさが出ているのに対し、ディズニーの動物もやっぱりちゃんと「ディズニーの動物」になっているんだな。
 これはプリンセスや王子様、お金持ちといったキャラクター・タイプすべてにいえることだけれど、ポっと出てきたデザインではなくて、もう何十年にも渡って創り上げられてきた「ディズニーらしい姿と佇まいと動きを持つキャラクター」なんだよなぁ、と感心させられる。

 音楽(『トイ・ストーリー』シリーズなどのランディ・ニューマン)とその表現にも安定感があり、これまた何十年にも渡って「映像と音楽の融合」を積み重ねてきたディズニー、引いてはアメリカに根づくミュージカル映画の伝統がなせる技なんだろう。
 レストランの開店を夢見る『夢まであとすこし(Almost There)』が、アールデコ調の画面ともあいまって軽快だ。

 批判も大きかったようだけれど「ディズニー初のアフリカ系プリンセス」に取り組んだのは、立派な挑戦。主要キャラを惜しまず死なせたり、「王子様との甘い愛と仕事を通じての自己実現、ふたつの価値観の対立」というありふれたテーマを、臆せずしっかりとまとめたストーリーも悪くない。
 まぁあくまで女の子向けなんだけれど、その狭い範囲の中だけにとどまらず、家族で観てみんなで楽しめる仕上がりを目指しましょうという、一種の誠実さも感じるところだ。

 ディズニーといえば日本語版の作りもちゃんと自分たちでコントロールしていて安心感のあるところ。本作もミュージカル系の役者や歌手を中心に起用し、音のオン/オフなどもしっかり再現してあって、これまた誠実だ。

 大傑作というわけではないけれど、ある意味でディズニーの底力に触れられる作品じゃないだろうか。

|

« 宇宙ショーへようこそ | トップページ | リンカーン »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: プリンセスと魔法のキス:

« 宇宙ショーへようこそ | トップページ | リンカーン »