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2013/05/23

デイブレイカー

監督:マイケル・スピエリッグ/ピーター・スピエリッグ
出演:イーサン・ホーク/ウィレム・デフォー/サム・ニール/クローディア・カーヴァン/マイケル・ドーマン/イザベル・ルーカス/ヴィンス・コロシモ/ジェイ・ラガーイア/クリストファー・カービィ

30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4

【人類vsヴァンパイア、戦いの中の希望】
 食料は人の血、そして不老不死。感染によって急増したヴァンパイアが統治する近未来の地球では、人類の割合が5パーセントを割り、人工の代替血液開発と、血に飢えて理性を失くした“サブサイダー”たちの駆除が急務となっていた。いまだ人間への未練を断ち切れない血液研究者のエドは、隠れて暮らす生き残りの人類たちと協力してヴァンパイアの治療法を探ることになったが、そこに弟フランキーや製薬メーカー社長の思惑が絡み……。
(2009年 オーストラリア/アメリカ)

【カッコいいけれど欠けもある】
 スタイリッシュなゾンビ・アクション映画『アンデッド』を撮ったスピエリッグ兄弟が、今回選んだ題材はヴァンパイア。
 その特異な趣味性といい、クールな中にグロテスク描写が混じる画面作りや空気感といい、どこか退廃的&絶望的な哀しみが漂う語り口といい、この兄弟らしさが本作でも炸裂する。

 やはり最大の特徴は、見た目のカッコよさ。沈んだ赤や青がギラリと光るメタリックな色調、アンダー気味の露出、幾何学的なモノをガシっと捉えるレイアウトなど、全編にわたって“SFっぽさ”が発現。
 人間の飼育器やヴァンパイアたちが暮らす殺風景な部屋など、ヴィジュアルイメージも鮮烈で、リップノイズまで拾うサウンドメイク、低く響くサントラともあいまって、いかにもなディストピアが出現する。
 炎を自在に操るSFXとVFX、ヴァンパイア/サブサイダー/臓物をリアルに作り上げたスペシャルメイク、ハデではないが着実なスタントといった仕事も良質だ。

 かといって「ただ見た目だけの映画」には陥らず、光の束を恐怖に変えてしまったりヴァンパイアが次々と爆発したりするスピード感豊かなアクションと、じっくり見せる人としての喜びや苦悩とを、硬軟なめらかに繋ぎ合わせて流れも上々だ。

 イーサン・ホークは『ガタカ』でもそうだったけれど、こうした陰とインテリジェンスと情熱とが混在する役が似合い、野性味たっぷりのウィレム・デフォーは美味しいところを持って行き、憎々しげなサム・ニール、下手に美人すぎず“やつれ”と希望とを同時に抱えるクローディア・カーヴァン、一本気ながら後悔に苛まれもするマイケル・ドーマン、と、キャストも申し分ない。

 問題があるとすればシナリオ。
 展開そのものにはスリリングなところも興味深いところもあるし、セリフからは機知も感じ、下手に説明しすぎない点も好感を覚える。
 だが、ヴァンパイアと人間の感染システム、そこで作用するメンタルへの影響、自己吸血の影響、物語のキーとなる治療法といった各種設定部分はけっこう強引。いや、強引で非科学的でもいいんだけれど、そこにエクスキューズを与える配慮に欠けるし、ディテールを描きこんで設定にリアリティをもたらす工夫も足りない。
 また「人間としての限りある生」に執着するエドの価値観は、彼の行動の推進力なのだから、もっとコッテリと「なぜ?」に踏み込んでもよかったはずだ。

 そういう部分へのコダワリこそが、SFをSFたらしめ、映画を映画たらしめる。まず説得力のある設定と人物を構築し、日常描写や「この設定だからこそ」「この人物だからこそ」の出来事も疎かにせず、そうして作品世界全体に存在感を与えることができたなら、より格の高い映画に仕上がったと思うのだが。
 雰囲気としては好きなだけに、ちょっと残念。

●主なスタッフ
 撮影のベン・ノットやプロダクションデザイン/衣装デザインのジョージ・リドル、SFXのダニエル・ハウエリングらは、主にB級のホラーやアクションものなどを手がけてきた人である模様。
 編集は『アイ,ロボット』に携わったマット・ヴィラ、音楽は『マスター・アンド・コマンダー』のクリストファー・ゴードン、サウンドは『ハッピーフィート』のウェイン・パシュリーやニック・ブレスリンら。
 VFXは『ターミネーター4』のランジー・サットン、スペシャル・メイクは『キング・コング』『LOTR』のリチャード・テイラーと『第9地区』『エピソードII』のスティーヴン・ボイルら。スタントは『ノウイング』のクリス・アンダーソン。

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