127時間
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ/ケイト・マーラ/アンバー・タンブリン/ショーン・ボット/トリート・ウィリアムズ/ケイト・バートン/リジー・キャプラン/ジョン・ローレンス/クレメンス・ポエジー/パーカー・ハードレー/コールマン・スティンガー/ベイリー・ミシェル・ジョンソン
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4
【岩と岩の間、孤独な127時間】
むき出しの岩肌と荒地がどこまでも続くブルー・ジョン・キャニオンは、トレッキングの名所として知られる峡谷だ。自称エンジニアのアーロン・ラルストンは、いつかこの地のガイドになる日を願い、今日もひとり道なき道を駆け回っていた。だが狭い峡谷の隙間に落ちたアーロンは、ひとかかえほどの小岩と岩壁の間に右手を挟まれ、身動きが取れない状況に陥る。小型ナイフなど手持ちのツールでなんとか脱出しようとするアーロンだが……。
(2010年 アメリカ/イギリス)
【孤独こそが恐怖】
だいたい、無茶をするヤツが悪い、と思うわけで。いっぽうでその無茶こそが人間を人間たらしめているのも事実だし、とも考えたり。
あと、若い女性ふたり組とか家族連れが歩いて行けるところに、フツーに凄い場所が広がっているアメリカの凄まじさに驚嘆。
そんなふうにお気楽に捉えないと押し潰されてしまうほどの恐怖が、本作には満ちている。
人生最大の恐怖は、痛みや死ではなく「孤独」。その恐怖に打ち克ち、抜け出すためのパワーとなるのは「孤独ではない未来」という希望。けっこう重厚なテーマを、キッパリと見せる作品だ。
ジャンプカット、弾む音楽、分割された画面、空撮からクローズアップまで多彩なサイズの画角、小気味のいい編集。それらによって生まれる軽快さで一気に映画の中へ引き込み、と同時にドキュメンタリー・タッチを交えてアーロンへの親近感も誘う。
そして、タイトルの出しかたの上手いこと。
以後も、アーロンの置かれた状況や彼の心理(焦燥感、知恵、勇気、恐怖を払拭するために振り絞ったユーモア、諦め)を丁寧にうつし、また、ただのナイフやロープ、水筒といったツールが“特別なもの”に感じられるよう絶妙な間とサイズで場面を捉えて、画面とお話とを展開させていく。
危機的状況だからこそ見えるもの(過去と現在と未来)を重ね、あるいは激痛を音で表現するといった工夫も取り入れ、つまりは手堅さと先鋭さとをミックスさせながらの、127時間。
ほぼひとり芝居となったジェームズ・フランコが、ちょっとこもったような声音で、気持ちの振幅の大きな役を好演している。
そうした作りの上手さといい、暗い劇場で観るのにふさわしい雰囲気を醸し出すところといい、ダニー・ボイルって映画の作りかたをわかってるよなぁと、エラそうだけれど、そう唸ってしまうのである。
●主なスタッフ
アーロン・ラルストンの自伝が原作。
脚本のサイモン・ボーフォイ、撮影のアンソニー・ドッド・マントル、プロダクションデザインと衣装のスティラット・アン・ラーラーブ、音楽のアル・ラーマン、サウンドエディターのグレン・フリーマントル、VFXのアダム・ガスコインと、主要スタッフの多くが『スラムドッグ$ミリオネア』からの面々。
ほかでは、もうひとりの撮影監督が『28週後...』のエンリケ・シャディアック、編集が『ディセント』のジョン・ハリス、SFXが『スター・トレック』のウィリアム・アルドリッジと『ハート・ロッカー』のブレア・フォード、スタントは『ダイ・ハード4.0』のパトリック・J・スターサムで、音楽スーパーバイザーは『ロックンローラ』のイアン・ニール。
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