ラスト・ターゲット
監督:アントン・コルベイン
出演:ジョージ・クルーニー/ヴィオランテ・プラシド/テクラ・ルーテン/パオロ・ボナチェッリ/ヨハン・レイゼン/イリナ・ビョークルンド/フィリッポ・ティミ
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3
【狙われる身となったヒットマン】
スウェーデンの雪深い地、何者かに狙われるヒットマンのジャック。相手を射殺して危機を逃れたものの、身の危険を感じた彼は、仕事の元締めであるパヴェルを頼ってイタリアの田舎町に身を潜めることとなる。そこで、暗い過去を持つベネデット神父や娼婦のクララと知り合い、同業者マチルデからの依頼で銃のカスタムを黙々とこなすジャック。だが、この地にも彼の命を狙う者が現れる。敵の目的は? ジャックに安息は訪れるのか?
(2010年 アメリカ)
【ヒットマンの生きざまを静かに描く】
あらすじだけ読むと派手なアクションにも思えるが、そうした要素はかなり少なめ。ゆっくりじっくりと、身を潜めて暮らすジャックの虚無感や焦燥感を描いていくような作り。これはこれで、味わい深い。
ジョージ・クルーニーの演技によるところは大きいだろう。実は“スカした野郎”というイメージが強くてあまり好きな役者ではないのだけれど、今回に関しては、いい。あまり表情を変えずに思考や感情を読み取らせる難しい芝居を楽々と見せてくれて、やっぱ上手いんだなと再認識。
クララ役のヴィオランテ・プラシドにはある種の浅はかさと人間臭さが、女性ヒットマン役のテクラ・ルーテンには真意を汲み取りにくい機械的な冷徹さがあって、どちらも綺麗なんだけれどベクトルの異なる美。このふたりのヒロインのバランスもいいし、パオロ・ボナチェッリも「あれやこれやみんな受け止めます」的な田舎神父を好演している。
彼らの様子を、説明もセリフも極力省いて描き、各人の芝居と、構成や組み立てで見せていく。
子羊を運んでいる神父の直後にはシチューを作っているシーンが入れられる。ヨコから、あるいはちょっと離れたところから人物を捉えるカットを長めに見せ、緊迫感の前兆を漂わせたところでポンとリズムを上げたり下げたり。そうした、観るものを試したり弄んだりするような口調が憎い。
監督は、もとは写真家で、U2のビデオクリップなども手がけている人らしい。その出自らしく、1カットずつがピシっと決まる。大きく舞台を捉えながら、その中の一部にちゃんと視線を誘導する手腕が素晴らしい。ラストカットなんて、よほど腕に自信がなければ作れはしないだろう。
ただし、下手にアーティスティックになりすぎることはなく、各シーン/各カットをスマートにまとめ、前述の通りの独特のリズム&静謐さの中に緊張感が漂う組み立てで、ジワっと迫る。
クルーニーの芝居とあわせて、「このヒットマンは、こうして、生きた心地とは無縁のままで生きてきたんだな」ということを感じさせる、密度の濃さと空気の質感に特徴のある作品である。
●主なスタッフ
原作小説を『28週後...』のローワン・ジョフィが脚色。監督の前作である『コントロール』からの継続スタッフが多く、撮影のマーティン・ルーエもそう。編集は『ラッキーナンバー7』のアンドリュー・ヒューム。
プロダクションデザインは『スラムドッグ$ミリオネア』のマーク・ディグビー、衣装は『サンシャイン2057』のスティラット・アン・ラーラーブ、音楽は『U・ボート』のヘルバート・グリューネマイヤー、サウンドエディターは『クイーン』のポール・デイヴィス。
SFXは『セントアンナの奇跡』のレナト・アゴスティーニ、VFXは『エターナル・サンシャイン』のルイス・モーリン、スタントは『天使と悪魔』のフランコ・マリア・サラモン。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
はじめまして、ブログ楽しく読ませて頂きました。
私はミニベロ乗りのたけとと申します。
ほんと丁寧に書いてあるのでとってもさんこうになります^^
投稿: たけと | 2013/06/13 21:57