アジャストメント
監督:ジョージ・ノルフィ
出演:マット・デイモン/エミリー・ブラント/マイケル・ケリー/アンソニー・マッキー/ジョン・スラッテリー/ジェシカ・リー・ケラー/シェーン・マクレイ/ジェニファー・アール/テレンス・スタンプ
30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4
【運命は乗り越えられるか?】
スラム出身の問題児ながら史上最年少で下院議員となったデヴィッド・ノリス。上院選挙では敗れたものの、偶然出会った女性エリースの影響から放った実直な敗戦演説で高感度を上げる。エリースに心を奪われたデヴィッドに対し、ふたりの再会を阻もうとする謎の一団。彼らこそ、人間が定められた運命から逸脱しないよう“調整”する者たちだ。調整局を出し抜こうとするデヴィッドだったが、ある事実を告げられてしまい……。
(2011年 アメリカ)
★ややネタバレを含みます★
【立ち位置が曖昧な仕上がり】
序盤、結構な数のエキストラを動員したり、離れた位置からデヴィッドを見守るカットが多用されたり、アンダー気味の画でそれほど明るくない未来を暗示したりなど、気合いを感じるしっかりとした作り。
ドアを開けてさまざまな場所を行き来する、という場面を1カットで表現するなどVFXの処理も妥当、“運命の書”のヴィジュアル・イメージもまずまず説得力がある。
が、そのほかはあまりよろしくない。
原因のひとつは、TVサイズで地味な画面。良かったのは上記の通り序盤とクライマックスだけで、全体としてはワクワク感やスリルに乏しい。ベースがラブ・ロマンスなので仕方ないとはいえ、起こっている「事件」と見た目との乖離を感じる。
それ以上に引っかかるのが、ストーリーの視点。デヴィッドと調整局、両方から描く形にしたことで、わかりやすさは出た反面、テーマや物語にブレが生じてしまっている。
未来と「いまどうしたいか」という想いとの板ばさみになって苦しむ切なさを前面に持ってきたいならデヴィッド側の描写で徹底しなければならなかったはず。いっぽう、どんなに足掻こうと結局は運命の中で翻弄されるだけの人間、さらには調整局の仕事の空しさ、という部分をクローズアップしたいなら調整局員ハリーからの視点(こちらが好み)に絞るべきだったように思う。
どこへ持って行きたいかが曖昧なため、せっかくの題材を上手に生かし切れなかった、という仕上がりに感じる。
●主なスタッフ
監督・脚本は『オーシャンズ12』や『ボーン・アルティメイタム』の脚本を手がけた人で、これが初メガホン。原作は『ブレードランナー』や『スキャナー・ダークリー』のフィリップ・K・ディック。
撮影は『ゴーン・ベイビー・ゴーン』のジョン・トール、編集は『レクイエム・フォー・ドリーム』のジェイ・ラビノウィッツ。
プロダクションデザインは『デュプリシティ』のケヴィン・トンプソン、衣装は『カポーティ』のカーシャ・ワリッカ・メイモン。
音楽は『マイ・ブラザー』などのトーマス・ニューマン、サウンドチームは『HACHI』のデイヴ・パターソンと『オー!マイ・ゴースト』のロバート・ヘイン。
SFXは『セントアンナの奇跡』のスティーヴン・カーショフ、VFXは『ヘルボーイ』のマーク・ラッセル、スタントは『プリンス・オブ・ペルシャ』のジョージ・アクィラー。
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