オブリビオン
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ/オルガ・キュリレンコ/アンドレア・ライズブロー/ニコライ・コスター=ワルドー/ゾーイ・ベル/メリッサ・レオ/アビゲイル・ロウ/イザベル・ロウ/モーガン・フリーマン
30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4
【彼らはなぜ地上に残されたのか】
異星人スカヴの侵攻は辛くも退けたが、月は砕け、地震や核兵器の使用によって地上は荒廃。人類は空に浮かぶ基地テットへと逃げ、土星の衛星タイタンへの移住計画を進めている。テットからの指示を受けながら地上をパトロール、スカヴの残党を監視するのは、記憶を消されたジャック・ハーパーとヴィクトリアだ。任務終了まで2週間。夜ごと不思議な女性の夢を見るジャックは、ある人物との出会いを機に真実へと導かれることになる。
(2013年 アメリカ)
【面白いが、もう一歩が欲しかった】
やっぱ30年もトップを張り続けるトム・クルーズって、たいしたもんだよね。IMDbのBiographyで、こういわれているのは笑えるけど。
Often plays characters caught up in extraordinary circumstances
(たいてい何かに巻き込まれる役)
ぶっちゃけ今回もそうだ。ただ、ヴィンセントともイーサン・ハントともロイ・ミラーとも似ているけれど微妙に違う。これまでの杵柄を上手くアレンジ、足の運びや銃の構え、視線の送りかたで“ちゃんとトレーニングされたエリート”を表現しながらも、しっかり“悩みながら、マイペースでありながら、芯がある”ジャック・ハーパーという人物をまっとうしている。
そういう意味で、トム・クルーズの映画であると同時にジャック・ハーパーの物語にもなっていて、そこはさすが。
相手役のオルガ・キュリレンコとアンドレア・ライズブローも上々で、前者は過去作にはない清純なイメージが新鮮、後者は品のある美しさと女の浅はかさを体現して、どちらも見ごたえがある。
見ごたえといえば、絵的にもハイクォリティ。CGの質、バブルシップやドローンやスカイタワーなどのデザイン、衣装の質感(モーガン・フリーマンの「いかにも私がリーダーです」的なマントが微笑ましい)、荒廃した地球を完璧に現出させるアイスランドのロケーション……。
そこでスピード感豊かにバトルとスリルとが展開する。監督のガジェット趣味や近未来創出センスとトムのアクション大好きパワー(本作でも身体を張っています。総合格闘技の技なんかも出したりして)が、いい具合に融合している感じ。
やりすぎなほど立体的な音響の作り込み(大仰過ぎるサントラが全編に渡って響きまくるのはアレだけれど)とも相まって、劇場で観るのにふさわしいスケールになっている。
問題はストーリーか。
いや、観客の興味を惹きつつ謎を解明していく流れはしっかりまとまっているし、メリハリも効いている。例によっての“なっちゃん字幕”もいつもに比べればマシ(っていうか、もはや観る側が「なっちゃんだからな」と補正をかけて読み解く域に来てるんじゃない?)。細かな突っ込みどころ、整合性が取れていない部分、フォローされていない箇所もあるけれど、まぁ許容範囲内だろう。
ただ、あれやこれやの寄せ集めである点は否めない(バレになっちゃうんで元ネタはいえないけれど)。寄せ集めでも上手に組み合わせて新たな魅力やセンス・オブ・ワンダーを作ってくれればいいんだが、どうも設定の練り上げかたや全体的なテイストが、元ネタたちが作られた時期=10年以上前のレベルで、いまさら感が募る。
アンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』がオモワセブリックに出てくるけれど、本編のテーマと有機的に絡み合う感じはなく、ちょっと場当たり的。
悲恋が大きなテーマとなっているわりに、切なさは不足気味。ジャックとふたりの女性との関係は、スリル基調&スマートに描くのではなく“運命の悪戯が呼んだ哀しさ”を前面に出してもよかったはずだ。
そして、説明的。肝心な部分を「これこれだ」とセリフで解説する。
面白くないわけじゃない。むしろ、楽しくてよくできた映画だと思う。けれど、そこからさらにワンランクのステップアップを果たすための、観た人の心に何かを突き刺すための、SFマインドやディテールへのこだわり、ラブ要素などにはちょっと欠けるかな、という印象の仕上がりだ。
●主なスタッフ
脚本/カール・ガイダシェク『ブレイクアウト』
脚本/マイケル・アーント『トイ・ストーリー3』
撮影/クラウディオ・ミランダ『ライフ・オブ・パイ』
編集/リチャード・フランシス=ブルース『レポゼッション・メン』
美術/ダーレン・ギルフォード『トロン:レガシー』
衣装/マーリーン・スチュワート『トロピック・サンダー』
音楽/M.8.3『主人公は僕だった』
音響/アル・ネルソン『カーズ2』
音響/グウェンドリン・イエーツ・ホイットル『アバター』
音響/レン・クライス『ジョン・カーター』
SFX/マイケル・メイナードス『ゴースト・プロトコル』
VFX/エリック・バーバ『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
VFX/ビョルン・メイヤー『ハンガー・ゲーム』
スタント/ロバート・アロンソ『ナイト&デイ』
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