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2013/07/08

コンテイジョン

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:グウィネス・パルトロー/マット・デイモン/ローレンス・フィッシュバーン/ジュード・ロウ/マリオン・コティヤール/ケイト・ウィンスレット/ジェニファー・イーリー/ブライアン・クランストン/エリオット・グールド/サナ・レイサン/チン・ハン/ディミトリ・マーティン/ジョン・ホークス/モニーク・ガブリエラ・カーネン/アルミン・ローデ/ラリー・クラーク/エンリコ・コラントーニ/ランディ・ローウェル/アナ・ジャコビ=ヘロン/ブライアン・J・オドネル/グリフィン・ケイン

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4

【広がる感染】
 香港から帰国したばかりの会社役員ベスが発作を起こして急死し、同じ症例が全米をはじめ世界中で確認されるようになる。CDC(疾病予防管理センター)のチーヴァー、ミアーズ、ヘクストールらは原因となったウィルスの分析と対策を急ぎ、WHOから香港へと派遣されたオランテスは感染経路の確認を進める。いっぽうカリスマ・ブロガーのクラムウィディはCDCが何かを隠していると主張し、独自に情報を収集していた。
(2011年 アメリカ/UAE)

【淡々とした世界の中の希望】
 グラス、手すり、書類、咳、電車やエレベーターの中……。序盤から接触感染のルート(となる可能性のあるもの)がこれでもかと重ねられ、いったん未知のウィルスが人間世界に侵入したなら、その拡散と猛威を防ぐ術などないことを思い知らされる。
 このあたりは“いかにも”ながら静かな撮りかた。そういうベクトル、つまりはジワリと迫ってくるリアルが特徴。

 アジア起源のウィルスが「東京で撮られたケータイ動画」から世界へ発信されるというのはありえそうだ。解剖、カウンセリング、テロ対策と、立場によっていくつもの「死後の対応」が存在することにも、なるほど納得。
 事態が進むに連れて関わる人の数は増え、ネット経由でデマがはびこり、暴動が発生し、社会は機能不全に陥って、そして身近な者をとりあえず守ろうとするエゴが発揮される。

 そうした様子を、ことさらドキュメンタリー・タッチにするのではなく、あくまで劇映画的に、けれども淡々と描いていく。
 シャープな画質、小気味よさと冷徹さとを併せ持つ編集、説明を極力省いて展開させていくリズム感が、ズルズルと地獄へはまり込んで行く人たちの様子を上手く伝える。

 豪華キャストを十分に生かせているとはいいがたいし、関係者以外の描写が希薄で広がり感(ウィルスが全世界に蔓延していることの危機感)も足りないのだけれど、その範囲内で一定のテンションを維持、観る者を引っ張っていく堅さはある。

 で、淡々とした映画世界の中に埋め込まれたいくつもの熱さを感じる。

 まずは、人と触れあうことの意味。ウィルスの驚異の前ではそれは恐怖にほかならないわけだが、握手の起源に関するエピソード、恋人どうしのダンス、見ず知らずの人との交流などと絡めて“接触”が描かれることで、当たり前のように存在する“触れあう幸せ”(あるいは恐怖なく触れあうことができる世界)を、再認識させる。

 その幸せを取り戻すために滅私を貫く者、危険をかえりみず他者(人類)を救おうとする者の存在が描かれる。それこそまさに希望なのだが、以前ならヒーローとして扱われたそうした人たちを、あくまでプロフェッショナルとして認識するのが9・11以降の特徴だろう。

 ただ、いくら事態がいい方向に向かう兆しは見えたとしても、失ったものは戻らない。とてつもなく大きく深い哀しみが、個人レベルでは人を覆う。「めでたしめでたし」で終わらせず、ちゃんとその哀しみに目を向け、それを乗り越えることもできるはずと思わせるところは、本作の誠実さだ。

 そして、3・11を経験した日本人としてできることにも思いを巡らせねばならない。
 脱原発、それを支える再生可能エネルギーの開発、除染技術、防災や救難のオペレーションなど、いまの日本が真剣に取り組み、人類社会に還元しなければならないテクノロジーは多いと思う。
 が、実はもっとも世界に輸出することで歓迎されるのは“日本人らしさ”ではないか。危機に際して、助けあい、粛々と事に向かい、乱れず、これ以上多くの人が困ってしまう状況を作らない配慮。
 そんなことを、本作の暴動シーンと、「なぜ日本人はこういうときにも大人しく列を作って乗り物や食料を待つのかと世界が驚いた」というニュースとをあわせて、考えたりするのである。

●主なスタッフ
 スタッフは『インフォーマント!』などソダーバーグの過去作とかなり共通しているが、本作はオーソドックスというか、この監督らしい“ちょっとハズレたリズム”は感じられない仕上がり。
 脚本は『ボーン・アルティメイタム』などのスコット・Z・バーンズ、撮影監督のピーター・アンドリュースはソダーバーグ自身のこと。編集は『バベル』のスティーヴン・ミリオン。
 プロダクションデザインは『オー!マイ・ゴースト』のハワード・カミングス、衣装は『007/慰めの報酬』のルイーズ・フログリー。
 音楽は『ソラリス』のクリフ・マルティネス、サウンドエディターは『エリン・ブロコビッチ』のラリー・ブレイク。
 SFXは『ウォンテッド』のジョン・D・ミリナック、VFXは『スモーキン・エース』のトーマス・J・スミス、スタントは『ミルク』のロッキー・カペッラや『オール・ザ・キングスメン』のリック・ルフェイヴァー。

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