アナザー プラネット
監督:マイク・ケイヒル
出演:ブリット・マーリング/ウィリアム・メイポーザー/ジョーダン・ベイカー/フリント・ベバレッジ/ロビン・テイラー/クマール・パラナ/マシュー=リー・アルルバフ/ミーガン・レノン/AJ・ディアナ
30点満点中16点=監4/話2/出4/芸3/技3
【罪を背負った女性と、もうひとつの星】
MITに合格したローダは、酒に酔ったままクルマを運転して事故を起こし、音楽教授ジョン・バローズから愛する妻と息子を奪ってしまう。それはちょうど、地球と瓜ふたつの星“アース2”が天空に発見された日の夜だった。4年の服役を終え清掃夫として働き始めたローダは、罪を償おうとジョンに接近。すっかり生きる気力を失くしていたジョンは、彼女の素性を知らずにローダを雇う。やがて心を通わせあうふたりだったが……。
(2011年 アメリカ)
【空気感はマズマズだが、期待とは異なる】
監督マイク・ケイヒルはドキュメンタリー畑の出身で、これが長編ドラマとしては初の作品。主演兼脚本のブリット・マーリングも、自らドキュメンタリーを作るタイプの人。そういう出自が現れた映画だ。
監督自身が回す手持ちカメラによる撮影、その場の音を拾い上げるサウンドメイクで、ドキュメンタリー・ライクのノリ。芝居も、キッパリしたものではなく、ローダやジョンのオドオドとした様子をそのままに、恐らくはアドリブも交えながらのものだろう。
ノイジーな画質がひんやりとした空気をよく捉え、空に浮かぶアース2の姿は美しく、音楽は適度に無機質。雰囲気はいい。
いたたまれなさと冷たさに満ちた作風の中で、消去と修復をテーマとした物語が急ぐことなく描かれていく。
その物語が、やや残念。
アース2にどうやら「もうひとりの自分」がいるらしいと知ったとき、わずかな希望にすがるような目で夜空を見上げるローダの様子。また、ある種の救いなのか、それとも「結局はあちらも……」と打ちのめされるべきものなのか、考察の余地を残すラストカット。これらはいい。
が、全体としての進行は、お話のためのお話、頭の中で都合よく作られた関係、というイメージを拭えない。ジョンがローダの素性を知る場面にも工夫がないし、そもそもアース2の設定が“道具”にとどまっていて、期待したものとは違うと感じる人が多いのではないか。
尖った部分やセンス・オブ・ワンダーで勝負する映画ではなく、あくまでも「罪を犯さなかった自分」「愛する者を失わなかった自分」という叶わぬ夢を見てあがく男女の様子を描いた習作として観るべき映画だろう。
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