カウボーイ&エイリアン
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ダニエル・クレイグ/ハリソン・フォード/オリヴィア・ワイルド/サム・ロックウェル/ノア・リンガー/アダム・ビーチ/クランシー・ブラウン/ポール・ダノ/アナ・デ・ラ・レゲラ/アビゲイル・スペンサー/クリス・ブラウニング/フリオ・セディージョ/デヴィッド・オハラ/ラウール・トゥルヒーロ/キース・キャラダイン
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【過去に苦しむ男たち、エイリアンと闘う】
西部開拓時代、荒野の真ん中で目を覚ましたひとりの男、腕には決して取り外せない金属製のリング。記憶も曖昧な彼は、“大佐”と恐れられるダラーハイドが牛耳る町へたどり着いたものの、お尋ね者ジェイク・ロネガンとして拘束される。そこに突如現れ、住民を次々と連れ去る謎の飛行物体。腕輪の力で飛行物体の1機を撃ち落したジェイクは、過去を取り戻すため、ダラーハイドや怪しげな美女エラらとともに北を目指すのだった。
(2011年 アメリカ)
【人物の描きかたに再考の余地あり】
タフガイ、偉そうなボス、トラブルメーカーのバカ息子と忠実な部下、善玉エイリアンに子どもに親切な老人……。全体として、どこかで観たような展開とキャラクター配置と人物名の、寄せ集め的なイメージ。記憶喪失と左手の銃なんて、まんま『コブラ』だし。
西部のガンマンとエイリアンの対決、という基本アイディアこそ突飛だけれど、それを、悪くいえば工夫のない、よくいえば安定したフォーマットのもとで見せていく映画、といったところか。
その範囲内でのデキは、まずまず。見せ場は序盤からクライマックスまでそれなりに散りばめられているし、エイリアンの倒しかたや人間どうしのアクションにはそれなりにバリエーションがあるし。
暗い場所でおこなわれるアクション場面が多く、その点ではモヤモヤが残るけれど、ADVシューティングのノリでラストまで見せ切る。
気に入っているのは、犬の扱い。遠くからやってくるジェイク、その傍らに駆ける犬、という図は“これぞザ・ヒーロー”という雰囲気に満ちていて楽しい。
が、お話の流れやまとまり感は、ちょっと不満。というより、お話を引っ張っていくはずの「人物」がちゃんと描けていない。
まず、大佐と呼ばれることを恥と感じるダラーハイド、好きな女性を守れなかったジェイク、過去に苦しむふたりの男の葛藤がアッサリとしすぎ。ジェイクとダラーハイド、ジェイクとサラ、ダラーハイドと息子、ダラーハイドと部下、ダラーハイドと少年、ドクと周囲、ダラーハイドと酋長など、あらゆる人と人との関係も十分に盛り込めていないから、決意や展開や行動が唐突に思えてしまう。
あと、地球人そのものをアメリカ史におけるネイティヴ・アメリカンに見立てる、という意図もあったはずだが、それもモヤっとしたまま進む。
人物への焦点が定まらず、いきなりポンっと「この人はこういう人なんです。だからこうなりました」的な帰結を持ってくる。そのせいで、オープニング~雨宿りまでの前半部は、観ている側が期待しているテンションと登場人物たちの気迫が釣り合わず、入り込んでいけない。後半は急転、あれやこれやがいきなり明らかとなったり、仲違いしていたもの同士が突然結びついたりと、急ぎすぎの印象を与える。
つまらなくはないけれど、人物とお話の濃度が足りないために、本来なら出せるべき面白さを作り出せなかった作品である。
●主なスタッフ
コミックが原作で、その原案スタッフが脚本にも参加。
スタッフは総じて2つの映画のカップリングという雰囲気で、脚本のマーク・ファーガスとホーク・オストビー、撮影のマシュー・リバティーク、編集のダン・レーベンタール、衣装のメアリー・ゾフレス、サウンドエディター&デザインのフランク・ユルナーとクリストファー・ボイエス、SFXのダニエル・サディック、スタントのトーマス・ロビンソン・ハーパーとフレディ・ハイスらは『アイアンマン』シリーズのチーム。
いっぽう脚本のロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフ、プロダクションデザインのスコット・チャンブリス、VFXのロジャー・ガイエットは『スター・トレック』のチーム。
他では音楽が『ザ・タウン』のハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。
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