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2013/07/18

アリス・クリードの失踪

監督:J・ブレイクソン
出演:ジェマ・アータートン/マーティン・コムストン/エディ・マーサン

30点満点中19点=監4/話4/出4/芸3/技4

【男と男と女。誘拐犯と相棒と被害者】
 刑務所で知り合ったヴィックとダニーは、周到に準備を整え、富豪の娘アリス・クリードを誘拐した。アリスを監禁場所のベッドに拘束、彼女の父親に多額の身代金を要求するふたり。緊張のため食事も喉を通らないダニーをよそに、冷静かつ高圧的なヴィックが指揮する計画は順調に進む。だが、アリスが一瞬のスキをついてダニーから銃を奪ったことがキッカケとなり、意外な事実がいくつも明らかとなっていく。果たして事件の行方は?
(2009年 イギリス)

★ややネタバレを含みます★

【ホープのデビュー作にして出世作となりそう】
 何度観ても顔と名前が一致しないジェマ・アータートン(インパクトには欠けるけれど、それだけ“我”を出さずいろんな役に溶け込んでいるってことか)だが、今回は鮮烈に印象を残す役柄と芝居で鬼気迫るものを感じさせてくれる。
 逆にいちど観たら絶対に忘れないエディ・マーサンも、カピバラそっくりの顔で縦横無尽、ヴィックという難しい男を、静かに、ときにうろたえる可愛さも見せながら好演する。
 マーティン・コムストンはパっとしないんだけれど、それを補って余りあるふたりの役者魂

 で、純粋にこの3人だけの映画。場所も9割がたが監禁部屋。舞台劇でもやれそうなお話なんだが、そう思わせないよう、ただのお芝居映画にならないよう、映画的な見せかたにも配慮している。
 オープニング、無言で進められる準備が素晴らしい。ガツっとした編集で軽快なテンポが作り出されていると同時に、ヴィックとダニーの結び付きの深さも表現。
 その後も、灯りの捉えかた、人物の浮かび上がらせかたが上手く、奇をてらったり前衛的になりすぎない程度に映像的な楽しさやスピード感、ハラハラ感をキープ。こんなふうに撮りたい、こんなふうにつなげたい、という意志を感じる仕上がりでもある。

 まぁ、これを観て何かを得るとか、感心・感動するといった類の映画ではなく、しょせんは浅はかな悪党どもの犯罪顛末記。けれどそれを、予想もつかないことが起こるストーリー展開的にも、緊張感を保つ見せかた的にも、しっかりとまとめきってある。
 なぜ「誘拐」ではなく「失踪」なのか、ということを考えたとき、沸き上がってくるニヤリが楽しい。

 監督・脚本は『ディセント2』とか短編とかに関わり、現場で修行しながらチャンスをつかみました、みたいなイメージの人のようだ。これが初長編となるわけだが、それでもこのクォリティ。今後はメジャーや大作に抜擢されるのは確実だろう。その割にプロジェクトの話がまったく表に出てきていないのがちょっと心配だが。

●主なスタッフ
 撮影のフィリップ・ブローバックは、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のルパート・ワイアットと組んでいたようだ。編集は『ミリオンズ』ではアシスタントだったマーク・エカーズリー、プロダクションデザインは『アレックス・ライダー』のリッキー・エアーズ、衣装は『BOY A』のジュリアン・デイ。音楽はこれまでほぼビデオゲーム専門だったマーク・キャナム。

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