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2013/07/04

猿の惑星:創世記(ジェネシス)

監督:ルパート・ワイアット
出演:ジェームズ・フランコ/フリーダ・ピント/ジョン・リスゴー/ブライアン・コックス/トム・フェルトン/デヴィッド・オイェロウォ/タイラー・ラビーン/ジェイミー・ハリス/タイ・オルソン/デヴィッド・ヒューレット(以上が人間)/アンディ・サーキス/カリン・コノヴァル/テリー・ノタリー/リチャード・ライディングス/クリストファー・ゴードン/デヴィン・ダルトン/ジェイ・カプート(以上が猿)

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【進化する猿】
 実験体のチンパンジー“ブライトアイ”が騒動を起こしたせいで、ウィルが進めていたアルツハイマー治療薬ALZ112の開発研究は打ち切りとなってしまう。だがブライトアイの息子シーザーにALZ112の効果が遺伝していることを発見したウィルは、アルツハイマーに悩む父に薬を投与、人間にも劇的な効果があることを確認する。いっぽう人間並みの知能を身につけたシーザーの中では、次第に自我が目覚めつつあった。
(2011年 アメリカ)

【いくつかエピソードが加われば完璧】
 オープニングの狩りのシーンといい妊娠がキーワードになるところといい例のアレ(もはやネタバレではないのかな)といいイカルス号といい、オリジナル『猿の惑星』へのオマージュたっぷり。
 そのあたりの詰め込みかたの、サービス精神と“あざとさ”との際どいバランスが楽しい。

 いっぽう、本作の独自性というかウリというか、初代から40年ぶんの技術革新もたっぷりと盛り込まれている。
 CGはちょっと“やりすぎ感”があるし、いかにもな質感なんだけれど、チンパンジーたちの動きはダイナミックで遊び心にあふれ、アングルやカメラワークにも凝っていて迫力があるのは確か。

 それと、パフォーマンス・キャプチャーの威力がかなり大きい。各所の評論・感想ではたびたび“リアリティ”という言葉が使われているようだが、むしろ別の狙いと効果があるように感じる。
 ピアノの使いかたや霊長類保護センターでのシーザーの様子など、全体に上手くセリフを省略して「見せてわからせる」という展開・演出。そのために、そしてストーリーをスムーズに進めるうえで、どうしてもシーザーに表情で演技させることが不可欠となる。それゆえに採り入れられ、フル活用された技術なのだと思う。
 テクノロジーに溺れたり「どうだ、凄いだろ!」と見せつけたりするのではなく、映画を作るためのツールとしてちゃんと意味を持たせ機能させている点に好感を覚える。

 ケチをつけたいのは、浅さ。というか、テンポの速さか。
 本来ならシーザーが己の生きる道を決断する前に、もう1~2エピソードあってもよかったはず。実験の意味を知り、「自分は何者なのか」について考え、「人間とは違う自分」や「周囲の同属とも異なる自分」に目覚める、そんな場面があってしかるべきだろう。
 たとえば「人間にはできない動き・パワー」を自覚するシーンがあるだけで、ちょっとスーパーモンキーすぎる猿たちの行動にも説得力がもたらされたはず。ウィルの親父さんとの交流場面も欲しかったし、ウィルの性格づけも不足している。

 このあたり、ゼロとはいわないものの最低限にまで削ぎ落とされているため、キャラクターの深みに欠け、ダイジェスト的かつ序章的な仕上がりになってしまっているのが惜しい。
 ポンポンポンと進んでちゃんとオチをつける優等生的なまとまりは好みだけれど、そこにプラスアルファの“深い情”があれば、と感じる。
 ハインラインの『猿は歌わない』は逆に“深い情”をバッサリ切り落としたことで涙を誘うラストとタイトルになっているんだけれど、そこまでの域へ達するのは無理な話だろうが。

 とはいえ、トータルのデキとしては水準以上。監督は16歳で初めて映画を撮って英BBCの映画コンテスト優勝を果たした人物だとか、B級スリラーくらいしかキャリアのないライターがこのクォリティのシナリオを仕上げたこととか、パフォーマンス・キャプチャーによって実現した表現とか、そういう「映画作りにおいて、機が到来した際に起こる爆発力」に感心させられる作品でもある。

●主なスタッフ
 撮影監督は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのアンドリュー・レスニー、編集は『キング・アーサー』のコンラッド・バフと『X-MEN:ファイナルディシジョン』のマーク・ゴールドブラット。
 プロダクションデザインは『アビエイター』などでアート・ディレクターを務めたクロード・パレ、衣装は『ブラインドネス』などのレネー・エイプリル。音楽は『幸せの1ページ』のパトリック・ドイル、サウンドチームは『ユージュアル・サスペクツ』のチャック・マイケルや『X-メン』のジョン・A・ラーセン。
 SFXは『パーシー・ジャクソン』のトニー・ラザロヴィッチ、VFXは『アバター』のジョー・レッテリでWetaが中心。スタントは『ウルヴァリン』のマイク・ミッチェルと、『アバター』や『タンタンの冒険』などパフォーマンス・キャプチャーの担い手となっているテリー・ノタリー。

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