モンスターズ/地球外生命体
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:スクート・マクネイリー/ホイットニー・エイブル/マリオ・ズニガ・ベナヴィデス/アンナリー・ジェフリーズ
30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4
【危険地帯を往くふたり】
地球外生命体のサンプルを乗せた宇宙船が帰還途中に大破。以来6年、メキシコでは多足型の巨大生物が徘徊するようになり、米軍は国境に「壁」を築き、空爆にも力を注いでいた。なんとかメキシコ内へ入ることに成功し取材を続けていたカメラマンのコールダーは、現地で負傷した新聞社社長の娘サマンサを国境まで送り届けることになる。だが危険地帯を往く途上で、さまざまなアクシデントがふたりを襲うのだった。
(2010年 イギリス)
【上手く作ったが、それ以上ではない】
総予算1万5千ドルという衝撃的な噂が飛び、実のところは20万ドルから80万ドル(50万ドル説が有力)ともいわれているが、いずれにせよ低予算で作られたSF映画。
で、低予算ながらハイクォリティとして話題となったわけだが、なるほどそれだけのことはある。
主演ふたり以外は、見るからに素人。「現地の人にボランティア感覚で出てもらったんだろうな」と思ったら、案の定そういうことらしい。まぁ逆に違和感がなくて奏効している。
崩れたビルや落ちた戦闘機、道行く戦車や飛び交うヘリコプターなどがしきりに出てくるのだが、これはそうした光景が日常に溶け込んでいるロケーション(ホンジュラス)を最大限に生かしたものだろう。
で、フェイク・ドキュメンタリー風に撮り、アクションはほとんどなし。SF映画あるいはモンスター・パニックというより、ロード・ムービー的な内容にまとめてある。
つまり、無茶はせず風呂敷も広げず、予算内でできることを、製作前のベクトル決めから実際の撮影に至るまで、しっかりまっとうしたという仕上がり。タイトルから期待するような内容ではないためガッカリする人も多いだろうが、ある意味では誠実(というか、少なくとも『安っ!』とハナで笑われない方法論)だといえる。
それに、作りとしても上々。
これまで主にVFX畑を歩んできた監督のギャレス・エドワーズが脚本と撮影を兼務(恐らくVFXも)しての初メガホン。その他のスタッフも、まだキャリアはTVドキュメンタリーや短編止まりという人がほとんどである模様。音楽が『ラブリーボーン』のジョン・ホプキンスというのが目立つ程度である。
質量とも寂しいスタッフといえるわけだが、前述のロケーションや人の生かしかたが素晴らしく、汗っぽくてギラリとしてシャープな絵の質感、細かなカットワーク、手の込んだ美術、その場の音を拾う音響、作品の雰囲気に合致した音楽など、各パーツの仕事ぶりもいい。静かな緊迫感を最初から最後まで持続させる空気作りもなかなかのものだ。
でも、じゃあ予算云々を配慮に入れず評価しても傑作といえるかと問われれば、ちょっと苦しいか。なにしろ、ただ危険地帯を旅するだけの映画、見せ場といえる場面も少ないし。
それに存外と真面目に作ってあるため、カルトと呼ぶにも“何か”が足りないように思える。
トータルすると「上手く作ったな」「でもそれ以上ではないな」というのが素直な実感。ただ、この人が『ゴジラ』を撮るなら、おバカ映画にはならないだろうな、とは思わせるかも知れない。
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