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2013/09/06

完全なる報復

監督:F・ゲイリー・グレイ
出演:ジェイミー・フォックス/ジェラルド・バトラー/コルム・ミーニイ/ブルース・マッギル/レスリー・ビブ/マイケル・アービー/グレゴリー・イッツェン/レジーナ・ホール/エメラルド=エンジェル・ヤング/クリスチャン・ストルティ/アニー・コーレイ/リチャード・ポートナウ/ヴィオラ・デイヴィス/マイケル・ケリー/ジョシュ・スチュワート/ロジャー・バート

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【彼が望むのは復讐か、それとも】
 物的証拠の乏しい強盗殺人事件を担当する検事ニック・ライスは、高い有罪判決率を維持するため司法取引に応じる。これにより従犯格のエイムスが死刑、主犯格のダービーは禁固刑という捻じれた判決が下った。10年後、この裁判の関係者を狙う犯行が次々と起こる。警察は事件によって妻子を失ったクライドを逮捕するものの、証拠はゼロ。クライドは拘置所での待遇改善と引き換えに自白をするという取り引きをニックに持ちかけるが……。
(2009年 アメリカ)

【クセのある展開を真面目に丁寧に】
 邦題(ちなみに原題は『LAW ABIDING CITIZEN』で、法を遵守する市民、善民といった意味)や予告編からは、「細かなリアリティなど無視した復讐サスペンス・アクション」を予想していた。ところが序盤は意外と「何が正義か」を真っ向から描くような、どちらかといえば法廷モノにありがちなハードな設定と雰囲気だ。
 そこからクライドとニックのハイパーな頭脳ゲームに移行する、かと見せかけておいて、けれどもやっぱり、ちょっとバカっぽさのあるサスペンスへと突っ走っていく。

 脚本家カート・ウィマーの作劇は、ともすれば“無理め”に陥りがち。今回も「いきなりそりゃあないだろう」と思わせるクライドの職業・能力を持ってきたりして、フラフラと足もとは覚束ない。でも展開的にはユニークでショッキング。そんなお話を、『ミニミニ大作戦』のF・ゲイリー・グレイが、けれんみなくまとめてみせている。

 音でつなげる、という手法が1つの特徴。先のシーンの音楽が次のシーンにまで続いたり、次のシーンでの音が前のシーンに乗っかったり。死刑執行とチェロのコンサートをオーバーラップさせるのも印象的だ。こうした作りによって、多少強引な設定・展開にも流れのよさが生まれている

 6時を示す時計がデジタルではなくアナログというのも、何がどう素適かは説明できないけれど1つのセンスだと思うし、ニックの娘がDVDを見てしまった後のバツっとしたカットの切りかたも脳に突き刺さる。爆発など特殊効果にも手を抜いていない。

 ジェイミー・フォックス、コルム・ミーニイ、ブルース・マッギル、ヴィオラ・デイヴィスといった安定感ある役者たちに混じって、肉体派ジェラルド・バトラーが負けていない、というのも収穫。絶望と狂気と困惑と悔恨とが内側で鬩ぎあう男を好演している。

 全体として、やっぱり映画って細部まできっちりと丁寧に作れば面白いものになるんだな、ということがわかる仕上がり。
 そうして、クライム・サスペンスとしてのスリルを維持しつつ、冒頭で述べた通り「何が正義か」も考えさせ、それでいてクライドへの過度な感情移入を排し、ニックに寄ることもせず、微妙なバランスを実現している。

 ちなみに舞台となっているフィラデルフィアは、合衆国憲法の草案が完成した地。オープニングにうつる市庁舎屋上の銅像は、「自由で公平な裁判」などを説いて憲法にも影響を与えたウィリアム・ペン。作中で引用されるクラウゼヴィッツの「絶対戦争」とは「戦争とは物理的な強制力をもって敵に自らの意思を強制すること」という考えらしい。

 こういう盛り込みも含めて、司法制度エンターテインメントとでも呼ぶべき映画になっているように思える。

●主なスタッフ
 脚本は『リベリオン』『ウルトラヴァイオレット』『フェイク シティ ある男のルール』『ソルト』のカート・ウィマー。
 撮影は『マックス・ペイン』のジョナサン・セラ、編集は『英国王のスピーチ』のタリク・アンウォー。プロダクションデザインは『ミスト』のアレックス・ハードゥ、衣装は『インセプション』のジェフリー・カーランド。
 音楽は『イーグル・アイ』のブライアン・タイラー、音楽スーパーバイザーは『ブラック・スワン』のジム・ブラック、サウンドエディターは『アンストッパブル』のマーク・P・ストッキンガー。
 SFXは『ダレン・シャン』のケイシー・プリチェット、VFXは『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』のレイモンド・ガイリンガー、スタントは『フィリップ、きみを愛してる!』のアーティ・マレスキ。

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